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ようやく骨を取り終わり、鮭を口に入れようとすると、今までおとなしく会長の膝に座っていた転校生が、膝から降りこちらに駆け寄ってきた。
「俺の名前は!?」
当然わかるだろ!?という期待を乗せた目がキラキラとしている。
なるほど、こうやってみて見るとなんかペットみたいで可愛いかもな。
だから生徒会のやつらも気に入ったのか。
ふむふむと頷いていると、早くしろと急かすように机をバンッと叩かれた。
なんだよ怖いな。
「…えっと、転校生だろ?」
「違う!ちゃんと名前を呼べよ!」
「え…知らねー」
めんどくさそうに呟くと、転校生はムッと頬を膨らませた。
不機嫌になられてもお前の名前なんか興味無いから仕方ない。
「なんで気づかないんだよ」
俺の目をじっと見つめる転校生の声は、今までの子供のような大きい声じゃなく、首をかしげた。
あれ?転校生ってこんな喋り方だっけ?
不思議に思い、生徒会のやつらを見て見ると、彼らも不思議そうに首を傾げていた。
「…俺の名前は?」
「…しらない」
再び聞かれた問いに、転校生を見上げながらおずおずと答えれば、溜息をはかれた。
えー、なんでだよ。
別にいいじゃん名前なんて。
溜息をはかれた事にイライラしていると、転校生がおもむろに眼鏡ともじゃもじゃした髪を剥ぎ取った。
え、あれ鬘だったの!?
生徒会メンバーが驚かない所を見ると彼らは転校生が鬘をかぶってた事を知っていたようだ。
生徒会メンバーの所をむいていた俺の頬をつつまれ、転校生の所を向かされる。
転校生の素顔を見ようと顔を上げると、心臓がドキッと高鳴った。
「もう一度聞くよ?…俺の名前は?」
「かなた…」
吐息のように小さく名前を呼べば、彼方は綺麗な顔で微笑んだ。
「これで間違えたらお仕置きしちゃおうかと思ったよ。でもまぁ俺以外のやつの名前は覚えてなかったみたいだね?」
えらいよ、良い子と頭をなでられ、髪が乱れる。
髪がぐしゃぐしゃになった事に文句を言おうと彼方を見ればまた微笑えまれ、何も言えなくなる。
昔から彼方の笑顔に弱いのだ。
渡 彼方は俺の幼馴染。
小さい頃からずっと一緒にいて、誰よりも一緒にいて…
彼方よりも仲がいい人も居なかったし、彼方も俺よりも仲がいい人を作らなかった。
でも、ずっと一緒にいたのに、高校進学を期に彼方は海外へと行ってしまった。
それなのに、なんで彼方はここに居るんだろう?
俺の視線に気づいた彼方は、一瞬考える素ぶりをして、一拍置き、ぁあ!と納得したように頷いた。
「タロが他所にシッポ振ってないか心配でこっちに帰ってきちゃった」
「…え、おれ?」
俺が心配でわざわざ帰ってきたのか!?
海外まで行ったのに!?
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