1

生徒が集まる賑やかな食堂。
ざわざわと騒がしく、会話を楽しむ生徒たち。
その中でも一際賑やかなのが、生徒会専用席だ。

「渡、口についてますよ?」

「え!?どこだ!?」

「俺がとってあげるぅ!」

「てめっ!渡に近寄んじゃねぇよクソ会計!」

「渡、かわいい…」

いい年こいて食事も静かに取れないこいつらが生徒会なんてものをやっていていいんだろうか。

魚の身を解しながら、目の前のくだらないやり取りを見てため息を吐いた。

生徒会専用席とは、全校生徒から人気ありまくりな生徒会が、静かに食事を取れるようにと特別に作られた席だ。
静かに食事を取るために作ったのにお前ら生徒会が騒いでちゃ意味ないだろ。

その騒ぎの原因でもある転校生を見てみる。
うん、もじゃもじゃで怖い。
もじゃもじゃな頭で顔が覆われている転校生は非常に不気味だ。
しかし、そんな転校生を気に入ってしまった生徒会は転校生に構いまくる。
まるでダメな犬と飼い主みたいだ。
今だって、転校生の口元を拭いたりと忙しそうだし。
うえ、胸焼けが…
さっきからなんか俺の反応伺うようにチラチラ見てくるのもうっとおしい。

思わず顔をしかめると、転校生の頭を撫でていた書記と目があった。
げっ!

「なんですかその嫌そうな顔は」

「だって書記さんこわいんですもん」

「僕は副会長です」

あ、副会長か。
俺が間違えたからか、睨んでくる副会長はやっぱり怖い。

「なぁにー、平凡ってばまだ副会長の事覚えてないのぉ?」

副会長の冷めた笑顔から顔を反らしていると、転校生にあーんをしていた書記がけらけら笑いながら俺を指差してきた。

「うるせぇ。指差すなよ、書記」

「俺会計だし」

何回言わせんの?と、いつもの間延びした喋り方をせず、呆れたように呟く会計にすまんと謝る。

また間違ってたか。
俺は人の名前を覚えれない事で有名だったりする。
だって覚えれねぇんだもん。
仕方ない。
てゆか役職すら覚えてねぇし。
まぁ覚えれないっていうか覚えないだけだけど。
だって興味ないし。

不機嫌そうに頬を膨らませる会計に気づかないふりをして魚を解すのに集中する振りをする。

「おい平凡てめぇ、さすがに俺の名前はもう覚えてるよな?」

魚を解すのを止め、転校生を膝に乗せた書記を見やる。
さっきからなんだよこいつら。
真剣に魚解してんのが見えねぇのかよ。

「書記」

「会長だボケ!お前いつもいつも書記ばっかいいやがって!」

「いやー、いつかは当たるかなーって思いまして」

当たらなかったけどね。
覚えろ!と強く言ってくる会長さんがうっとおしくて、再び魚を解すのに集中する。
俺は早く鮭を食べたいんだよ。

骨をそーっと取っていると、服の袖を掴まれた。
なんだよ今めっちゃ良いところなのに。

「…なに?」

「書記、おれ」

目線だけ向けてみれば、無表情なやつが
なるほど、無表情でたどたどしく喋る彼が書記なのか。
すぐ忘れちゃうだろーけどさ。
でもこのやり取りもここ最近ずっとしてる気がする。
覚えない俺が悪いんだろーけどさ。
まぁ暴言ばっか吐かれてた頃に比べれば面倒くさくないからいっか。



prev next
もどる

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -