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チラチラと時計を確認していると、給湯室のドアが空いた。
「…あっ、」
途端に香るほのかな甘い香りに、頭がクラクラした。
紅茶の、匂いだ…。
「はい、空。紅茶だよ」
「わーい!いただきまーす!」
副会長が、カートで運んで来た紅茶を藤野に渡す。
会長や書記の机にも紅茶が置かれ、最後にカタンと少し乱暴な音を立てて俺の前に置かれた紅茶に、目が輝く。
「お前のも仕方なく淹れてやったんだから感謝しなよ」
「あ、ありがとうございます…」
カップを持ち紅茶を口に含むと、甘い匂いが体中に広がる…。
「フォートナムメイソンのアールグレイクラシックだ…」
この紅茶高いから中々手に入らないんだよなぁ…
それをただで飲めるなんて幸せすぎる…!
ポツリと零した言葉に、副会長が反応した。
「知ってるんですか…?」
驚いたように俺を見る副会長に、コクコクと頭を縦に振る。
「はいっ!俺、紅茶大好きなんで!フォートナムメイソンの紅茶高くてあんまり飲めないんでめっちゃ嬉しいですっ!」
紅茶の話になるとテンションが上がってしまう俺は、俺のことを嫌っている副会長に向けて笑顔を浮かべていた。
途端に、目を開き固まる生徒会メンバー。
え、俺なんか変な事言ったか?
藤野に至っては紅茶口から吹いちゃってるし!
もったいない!
「そ、そうなんですか…僕も紅茶が好きなんですよ…!その中でもこのアールグレイクラシックが一番好きで…!」
紅茶が好きらしい副会長が、少し興奮したように頬を赤らめて俺の隣に座ってくる。
しかもなんだか機嫌が良さそうだ。
そんなに紅茶が好きなのか…
なんか親近感わくなー
「アールグレイクラシック美味しいですよねっ!この香水みたいな甘い香りがいいんですよね〜」
紅茶の甘い香りにうっとりと頬を綻ばせると、副会長がゴクリと喉を鳴らし顔を真っ赤にした。
会長と書記は、それを面白くなさそうに見ている。
藤野は相変わらず吹き出してるし。
さっきから汚ないなこいつ。
制服の袖で紅茶に濡れた口元を拭おうとする藤野の腕を掴み顔を近づけた。
「な、尚人!?」
「うるさい。もったいねーだろ」
狼狽えて大きな声を出す藤野を睨みつけ、そのまま藤野の口元についた紅茶を舐めとった。
「わ、わ、わぁあああ!?」
「っ、おい、何して…っ!?」
「ぇ、ぇええええっ!?」
「な、なんて事を!」
「んー、おいし…」
甘い味が口に広がり頬が緩む。
俺の行儀の悪さに生徒会の奴らがなんか言ってるけど気にしない。
だってもったいなかったし。
俺の飲み終わったんだもん。
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