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頭にハテナマークをとばしていると、さっきから黙って俺たちのやり取りを見ていた宇佐見先輩がつまらなさそうにため息を吐いた。
「あ〜あ、言わないでよぉ。自分が男役だと思ってる野宮くんを逆に犯しちゃおうと思ってたのにぃ」
「やっぱりね…」
え、可愛らしくほっぺたを膨らましてる宇佐見先輩は今なんて言ったのかな…?
違うよね犯すなんて言ってないよね?可愛い宇佐見先輩がそんな事言う筈ないよね!?
顔面蒼白な俺に、宇佐見先輩はにっこりと笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ?僕たちのは野宮くんのよりも小さいかもだけどちゃんと気持ちよくさせれるからっ」
「小さいかもって何!?気持ちよくって何!?」
宇佐見先輩そんなの笑顔で言うことじゃないよ!?
思わず朝野にしがみつけば、ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。
あ、朝野…
「大丈夫、裕太の処女は僕が貰うから」
「いやぁああああああっ!」
朝野までなんか言い出した!
俺の頭を撫でていた朝野の手を頭をぶんぶんと振って振り落とし、朝野から距離を取った。
「嫌だってさ!野宮くんは僕に処女を貰って欲しいんだって」
朝野から離れた俺をぎゅっと抱きしめた宇佐見先輩は、腰をさわさわと触ってきた。
ひいっ!先輩こんなにかわいいのに手つきが変態くさいっ!
「やだっ…!ってゆーか俺の純潔は誰にも渡しません!」
「えーっ、やだぁ!そんなの皆納得しないよ?」
皆と言って指差したのは廊下にいる子達で…
…まさか…
「え、その子達もみんな…?」
「うん!みんな野宮くんの処女を狙ってるよ?」
「いやぁああああああああっ!」
不安になって聞いてみればやっぱりか!
悲鳴をあげれば朝野が宇佐見先輩の腕の中から俺を引っ張り出し、大丈夫と頷いた。
大丈夫じゃねぇよ!
朝野も信用できねぇし!
「ってゆーか皆かわいい顔してなんで男役やりたがってるの!?普通逆でしょ!?貰うなら俺の童貞を貰ってよ!」
涙目で叫べば、朝野と宇佐見先輩が同時に首を横に振った。
しかも廊下にいる子達も首振ってるし。
え、なに?俺の童貞はいらないって?
「ほら、みんな男の子だからね。中には女役の子も居たみたいだけど野宮くんを見て男役にチェンジしたらしいよ?」
「裕太はなぜか男心をくすぐるからね。平凡のくせに」
「何それ全然うれしくない!ってゆうか俺も立派な男の子なんですけど!」
宇佐見先輩を睨みつけてもかわいいの一言で済まされてしまう。
俺が女役なんて絶対やだ!
俺の事を女役てして見てる親衛隊なんかつくりたくない…
「あの〜、親衛隊の話を無しにする事って…」
「できないよっ!もう生徒会に野宮くんの親衛隊結成書出しちゃったもん」
「えぇっ!?」
どうしても作りたかったからさぁと言って笑顔を見せる宇佐見先輩に、俺の目が潤んだのが分かった。
「これからよろしくねっ?野宮様っ」
そう言って更に笑みを深めた宇佐見先輩の顔は、完全に雄の顔をしていた。
「いやぁああああっ!」
「裕太は渡さない」
平凡な俺に、親衛隊ができました。
おわり。
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