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俺が今日から通う学校は、一言で言えば楽園だ。
たとえ男子校でも、学校が山奥にあって、街に行くのに二時間かかっても、全寮制であっても、俺にとっては楽園だ。
だってここは、
「可愛い子ちゃんのパラダイスだからっ!!」
声高らかに叫べば、後頭部に激痛が走った。
「大きい声出さないで。目立つから」
俺の頭を叩いたであろう人物を見れば、人形のように美しい顔を迷惑そうに歪めていた。
「朝野みたいな美人さんに叩かれるなんて幸せだなぁ」
叩かれた所をぐへぐへと笑いながらさすっていると、朝野は更に眉間に皺を寄せた。
そんな顔しても可愛いだけだぞっ!
朝野のさらさらの茶色い髪をなでれば、頬を赤くしてそっぽを向かれた。
きゃひぃいいいんっ!
きゃわぃいいいっ!!
なんでそんな可愛い反応しちゃうの!?
「朝野たんはかわいいねぇ!」
「う、うるさい…早く体育館行かないと入学式始まるでしょ」
朝野が可愛すぎて思わず抱きしめれば、俺の体にすっぽり収まった小さな体をじたばたと動かした。
朝野いい匂いするなぁ…
朝野の匂いを嗅ぎながら、腕時計に目を通せば入学式が始まる10分前だった。
このままじゃ朝野の言うように入学式が始まってしまう。
「わ、やべ!行こっ!」
「ちょ、ちょっと!」
朝野の手を握って走れば、朝野もおとなしくついて来た。
恋人繋ぎなのを照れたのか、また頬を染めている朝野がかわいくて、こっそり笑った。
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