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あれからようやく中野が起きたので、屋上に向かった。

屋上につくと、中野の右隣に高良、左隣に南野、少し離れた所に俺と芳野が座った。

「基一くん、今日ね、卵焼き自信作なんだぁ」

お弁当を開けようとすると、中野が自分で作ったらしい卵焼きを箸で挟み、あーんっと言って差し出してきた。

中野はいつも自信作のおかずを俺に食べさせようとしてくる。
ふにゃりと頬を緩め、あーんってしてくる中野は確かにかわいい。
いろんなやつが中野に夢中になるのもわかるなぁ。

「えーっ、基一ばっかずるい!俺にもあーんってしてーっ」

「桜、俺にも…」

そこに高良と南野が混ざってくるのもいつものことで、俺の口に入るはずだった卵焼きは高良の口の中に入っていった。

おいしーっといって中野を抱きしめる高良と、俺もと、中野にあーんをせがむ南野に呆れた笑みが浮かぶ。
芳野を見れば、同じく呆れたように三人のやり取りをみていた。
そうだよな、自分の友達があんな風にいちゃついてるとこ見るとそんな顔になるよな…

いつもはあの三人のやり取りに混ざる気になれず、疎外感を感じていたけど、今日は芳野がいるから気楽だ。
暫く3人のやり取りを見ていた芳野は、何かを思いついたのか、勢いよく俺の顔をみてきた。
なんだろ?

「じゃあ俺は広瀬にあーんってしてもらおっ」

「えっ、俺っ!?」

「うん、あーんってして?」

びっくりはしたけど、こういう風にスキンシップをしてくれる芳野に更に仲良くなったみたいで嬉しくなる。

「広瀬、あーんって言って?」

「あ、あーん?」

広瀬に言われ、恥ずかしながらもあーんって言いながら俺が食べようと箸に挟んでいたアスパラのベーコン巻を芳野の口に近づけた。

「やだっ!」

「だめだ…!」

芳野の開いた口にベーコン巻が入る寸前に、高良と南野の声が響いた。

「え…?」

「邪魔すんなよ、ほら、広瀬。あーんの続きしよ?」

二人の言葉に目をぱちぱちさせていると、芳野は俺の止まった腕を引っ張り、ベーコン巻を口に入れた。

「あっ、くそ!」

「…ちっ!」

「僕も基一くんにあーんってしたいなぁ…」

何故か悔しそうにしてる三人に困惑していると、ベーコン巻を食べ終わった芳野が意地の悪い顔をして三人を見た。

「お前らは三人でいちゃついてればいいじゃん?高良と南野は中野の事愛しちゃってるみたいだし」

その間俺は広瀬とらぶらぶしてるから、と言うと芳野が俺の腰に腕を回してきた。

「た、確かに桜は可愛いし大好きなはずだけど…っ!なんか…嫌なんだよ…」

「基一、お前もあんま気安く触らせんな…なんかイラつくから…」

「僕は基一くん大好きだよお?」

それぞれ必死に言い募ってくる三人
なんか急な展開についていけないんですけど…
な、なにどーゆーこと?
とりあえず中野の言葉にはありがとうと返しておく。
と、俺の腰を抱く芳野の腕の力が強まった。
え、なんで…っ!?

状況が理解出来ない俺はきょろきょろとみんなの顔を見ることしかできない。

「はぁ?中野はともかく、高良と南野は今まで広瀬を放っておいてそれはないんじゃない?」

なんか険悪な感じになってきてないか?
弁当食べる気しないんですけど…。

「そ、それはそうだけど…なんか桜と違って基一は誰かに取られんの嫌なんだよ…」

高良に真剣な表情で見つめられ、思わず目を逸らす。
しらねぇよこっち見んな!

「お前…あんま他のやつと仲良くすんな…」

高良と南野に左右の腕を引っ張られ、二人に抱きしめられる。
わ、なんか二人にこうされるのひさしぶりだ 。
久々のあったかい体温が心地よく感じて思わず二人の体に頭をぐりぐりとすり寄せてしまう。

「かっ、かわいっ!ちゅーしたいっ!…あ、あれ?ちゅー!?な、なんで!?基一は友達なのに…つ」

「……っ!」

「広瀬!俺以外のやつにそんな事したら、め!」

「喜一くんかあわいいっ!ちゅってしてもいい?」

あったかい体温にうとうとしている俺は気づいていなかった。
事態が悪化していることに。
なんか前みたいに仲良くできてるなぁ〜なんて呑気に思っていられるのもきっと今の内だけなんだろうな。


おわり




ほんとは平凡の事が好きなのに自覚してない美形二人と、平凡のことが好きなかわいこちゃん、平凡の事をずっと狙っていた美形くん。が書きたかったんです。

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