5

放課後、いつものように非常階段に座り相談を受けているが、何故か副会長の様子がおかしい。

ちらちらこっちを見てきて、目が合うと顔を真っ赤にして素早く目をそらすのだ。
え、なにそのかわいい反応。
何でだろ?俺無意識に副会長にセクハラとかしちゃってる?
俺の手を見てみたけどおとなしく俺の太ももの上にのっている。

え、じゃあなんで?

「副会長…?」

不思議に思い、副会長の顔を覗き込むと、顔を真っ赤にした副会長と目が合った。

一瞬ビクリとした副会長は、恐る恐る口を開いた。

「き、木野くんは…もしかして僕の事が…す」

「うわぁああああああっ!」

何か不吉な事を聞いてしまいそうになって慌てて大声を出して遮る。
ちょっと待ってちょっと待って!
今さ、俺が間違ってなければさ、
『もしかして僕の事が好きなのかな?』って言いそうじゃなかった!?
いや、でももしかしたら『すき焼き好きなんだと思ってる?』
とかかもしれないじゃん!いやでもそれだと会話の流れおかしくない?
そもそもなんか副会長顔真っ赤にしまくってて様子がおかしいし…
最近よく照れて顔を赤くする事はあったけど、こんな真っ赤じゃなかったし…なんか今日のお昼くらいからおかしいぞ…

今日のお昼?
今日さ、俺昼休み前に大声で叫んでなかったか?
副会長への愛を
え、嘘だろ!?
もしかして聞かれてた!?
思わず顔を赤くして副会長を見上げると、副会長も俺を見ていたのか、視線が合う。
慌てて一斉に顔をそらす俺達。

なにこれなにこれなにこの状況

副会長は篠田の事が好きだから、俺が副会長の事好きなんて事がばれてたら絶対迷惑に思われる…

それだけはダメだ!

「ふ、副会長!今日篠田が放課後は暇だって言ってました!篠田と遊びに行ったらどうですか?」

俺は副会長の恋を応援する従順な平凡を装わなきゃ!
副会長の側に居られなくなる!

「で、でも…放課後は君との時間だし…」

どこか不満そうな副会長を不思議に思いつつ、副会長を急かすように言葉を遮った。

「俺なんかよりも篠田との時間を作らないとダメですよ?篠田が好きなんでしょ?」

「……うん、そうだね…」

副会長はぎこちなく微笑むと、階段を降り寮へと向かって行った。





「そうだね、だってさ…」

一人になった非常階段で小さく呟く。
やっぱ副会長は篠田の事がすきなんだよなぁ…
そういう言葉を聞くと辛いけど、副会長の側にいれるなら我慢できる。
そのためには副会長に対するこの気持ちだけは絶対に、

「バレちゃだめだ…」

そう固く決意をし、俺も非常階段を後にした。

次の日から、少しづつ副会長を避け始めた。
近くにいると、ボロがでてしまうかもしれないからな。
昼休みは副会長がくる前に購買に走り別の場所で食べ、毎日のように乗っていた相談も用事があるからとメールで済ましている。

(すいません、今日も用事があって、非常階段に行けません、篠田は今日も暇だって言ってたので、今日も篠田と遊んだらどうでしょう…と、)

寮に帰り、カチカチと副会長へのメールを打ち、送信ボタンを押した。

副会長を避け始めて早一週間…
副会長と会う事がなくなったから、篠田が転校してくる前に戻ったみたいだ。

でもこれでいい、明日は非常階段に行くつもりだし、副会長に完全に会えないわけじゃないんだからさ
うううう、でもやっぱ副会長にもっと会いたいよ〜




ピンポーン

ソファーでゴロゴロしてるとチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だろ?
…流かな?

「はいはーい?」

ガチャリとドアを開けるとそこには、

「お邪魔してもいいかな?」

「ふ、副会長!?」

先ほどから会いたいと思っていた副会長が立っていた。

え、何で!?

誰かに見られるとやっかいな事になりそうだから急いで副会長を中に入れた。
篠田に用でもあったのかな?
あいにく篠田は、学校を抜け出して遊びに行っている。
俺も誘われたけど、めんどくさかったから断ったんだよな。

ソファーに座っている副会長に紅茶を出すと、ありがとうと微笑まれる。
お、俺の部屋に副会長がいるって変な感じ…
篠田の部屋でもあるんだけどね

「どうしたんですか?篠田なら出かけてて居ませんよ?」

紅茶を飲んだ副会長に尋ねると、カップを机に置き、小さく首を振った。

「春妃とは前から遊んでいないよ」

「え…?」

なんで?俺何回も篠田が暇って言ってたから遊びに行けばいいって言ったのに…

「木野くん、相談に乗ってもらって…いいかな?」

真剣な表情を浮かべる副会長に、断る事ができるはずもなく、俺小さく首を縦に振り、肯定の意をしめした。

「最近ね、春妃よりももっと気になる子ができたんだ…」

「え…?」

う、うそ、前まではそんな事言ってなかったのに…!
俺の動揺をよそに、副会長は話を続けた。

「その子はね、春妃が好きなのになかなか行動を起こせない僕の為に相談に乗ってくれてるんだ…」

え、それって…?

「僕の話を嬉しそうに聞いてくれてね、すっごく胸があったかくなったんだ…。それでね、なんでそんな嬉しそうに話を聞いてくれるのか不思議に思ってたんだけどね、この前理由が分かったんだ…」

そう言ってクスリと幸せそうに笑う副会長。
手を口に当てて笑うそれは、俺がすごく好きな仕草だ。

「前にね、授業が早く終わったからいつもより早めにお昼ご飯を誘いに言ったんだ…そしたらね、聞いちゃったんだ、その子が僕の事を好きって言ってくれたのを。」

や、やっぱり聞かれてたんだ!
思わず顔を赤くすると、副会長に頭を撫でられた。
は、恥ずかしい…

「僕は春妃の事が好きなはずなのに、その子が僕の事を好きだって言ってくれたのがすごく嬉しかったんだ…目が合えば顔を赤くしてしまうくらいにね」

そう言うと照れたように微笑んだ。

「自分の感情に戸惑っているとね、急にその子が僕の事を避け始めたんだ。…しかも、僕の事を好きだって言っていたのに、何故か春妃と一緒にいるように言ってくるし…」

だって、それは…副会長に気持ちがばれちゃうからって…

「なんで僕の事が好きなくせにそんな事をするんだろうって、避けられてる間凄くモヤモヤして
、頭の中がその子で一杯になったんだ…それこそ、あんなに好きだと思っていた春妃よりもね、」

なんか、副会長の話し聞いてたら
、副会長が俺の事好きなのかもって、勘違いしそうになる…
副会長が好きのは篠田なのに…

「春妃の事はね、可愛いし好きだとおもってるよ、」

ほら、やっぱりね、篠田が好きなんだ。
そうとは思っていても、副会長から言われると心臓がチクンとなる。
副会長は俯いた俺の頭をさっきよりも優しく撫でた。

「でもね、その子の事を、その子の笑顔を思い出すとね、抱きしめたくなるし、胸がきゅって締め付けられて幸せな気持ちになるんだ…」

副会長の言葉に思わず顔をあげると、いつもとは違う、いたずらっ子な笑みを向けてきた。

「その子は春妃よりも鈍感だからね…えっと…確か最初はスキンシップをとったりするんだったよね?」

そう言った副会長は俺の前髪を綺麗な手でよかし、おでこにそっと唇をおとした。


俺…期待しちゃっても…いいのかな…?


おわり。




prev next
もどる

「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -