この学校はとても広いけれど、誰がどこにいるのかなんてわたしにはわかる。
それはわたしの能力であり、自慢であり、唯一の取り柄でもある。

ただ、他人の場所がわかったところで何をするわけでもなく、まあ、ナニモシナイ。


それでもわたしはいつもあなたの隣にいる。

なぜ、わたしは今ここにいるのか。それはわたしにもわからないし、他のだれにもわからない。

言ってしまえば武器と職人だからということだけれど、別に休み時間はどこに行っていいわけだしなあ。

ぼんやりと歩いていると、みんなと一緒にいるあなたを見て、なぜかイライラした。すごくイライラした。

イライラしすぎて、あなたをみんなから引き剥がした。


「好きだ」

「うん」

「気付け、ばか」


はっとした。
なんでわたしはこんなことをペラペラしゃべっているんだろう。

ぽかんとした表情のみんなと、困ったように笑うあなたの顔。

わたしはただただ後悔するしかなかった。ただでさえ…ただでさえ一緒にいると平静を保っていられないのに、これ以上あわあわしたらどうしよう。


ぐるぐると考えていたとき、わたしの頭に衝撃波が走った。

周りを見渡せば一面の本。
そうだ、ここは図書館でいまは大事な大事なテスト前で魂感知につかれて、それで、いまの衝撃波は……


「ばか。寝すぎだ」

「お、おはよ…」

「おう。帰るぞ」


愛しいきみからの愛のげんこつだった。

そういえば最近たいした食事をしていない気がする。申し訳ないけど食事はインスタントにしないと勉強時間が少なくなってしまうから仕方ない。でも健康に気をつかってあげたい。無理だ。わたしはまじめだけが取り柄の他には魅力がない。

不安になってしまったわたしの口からは、いつも通りかわいくない言葉がでた。


「なんで、図書館にいるの、え、帰ってくれてて…よかったのに」

「なんでって言われてもな」

「いいから、言って」

「好きだから」

「……え?」

「気付けよ、ばか」


しっかりとつながれた手をもう離れないようにとわたしはぎゅっと握りかえす。

あなたのくれた言葉はどこかで聞いたことの言葉。

ああ帰ったらインスタントの食事とおいしいお菓子が待っている。
それに、今日想いが通じあったあなたもいる。きっと彼との一時はわたしの心臓を甘くさせて、それはマシュマロみたいにどろどろに溶かしてしまうんだろう。


2011.2.7
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