会話ばっかりでみじかめ




長期休暇に入る前、必ず行われる試験にホグワーツの生徒はみんな追われている。

中でも一番厄介な試験は魔法薬学の試験だ。持ち込み不可、何を出題されるかもわからない実技を一挙一動スネイプ教授の鋭い監視の下行わなければならない。
わたしはマグルでいう化学?がさっぱりわからないから、いくらスネイプ教授のことを大好きだって勉強もしたくないし、薬を調合するならぽかぽかした温室で行われる薬草学のほうがずーーーっとましだ。夏なのにひんやりとした地下室の前に魔法薬学でのクラスメイトが並んでいてみんな直前まで教科書を見ながらぶつぶつ唱えている。

とうとう、勉強不足のわたしの順番がきた。
わたしの後ろにはひとりも生徒がいなくて、わたしは最後だ。

わたしと入れ替えででてきた女子学生の青ざめた顔を横目で捉えてから軋む扉を開くと、なべや道具が並んでいて端にはスネイプ教授がいた。
久しぶりに会えた教授にほほがゆるんだわたしをあざ笑うかのように「縮み薬」とだけ課題提示した教授。つれないなあ、でも高学年にしては簡単な問題だと思う。わたしもそう思った、でも、わたしはそれすら何を入れたらいいのかぼんやりとしか思い出せない。仕方がないから記憶から引っ張り出してきた材料をとりあえずなべの前に並べた。

じりじり じりじり

焼けてしまいそうになる視線を感じて教授を見ると、わたしのすべてを見ていた。ここでふつうの生徒だったら怖くなって手が震えると思うのだけれど、わたしは逆で、見られていることが恥ずかしくなってきて顔が熱くなってきてしまった。

雛菊の根、萎びたイチジク、ネズミの脾臓、ヒルの汁…なにからいれるか、どのぐらいの大きさに刻むのか、思い出せない。
じりじりという視線に頭がおかしくなってきて、耐えきれなくなってきたため作業を中断した。

「みんなにも同じようなことやってるんですか?」
「さあ、どうですかな」
「そうやってまたはぐらかす…」

もういいです、と言葉を投げ捨てたわたしに口角をあげた教授はサドだ。この視線に頭がおかしくなって単位落としたらどうするんだ…責任とって結婚でもしてもらおうかなあ。
もう一度教授に目線を合わせると深いため息をついていた。もうこの時点でわたしの調合が間違っていることになる。

「あ、あの手があったか」
「今度は何だ。一応試験中なのを忘れるな」
「ここで開心術とか使ったら教授の記憶を見られるわけだし、カンニングには最適だなあ、と思いまして」
「姑息な」
「もう限界なんです」
「仕方ない、そんなに集中できないというのなら…」
「教授がキスのひとつやふたつしてくれれば集中できてきっと満点とれますよ」
「試験に合格したらキスのひとつやふたつくれてやろう」
「サディスティックな鬼だな全く…」

ことこととなべに入れられた材料が煮立って、もうすぐ完成する。
なべにはおぞましい形をしたものが入っており、昔授業で作ったそれとは似ても似つかないほど…授業で作ったときはこんなくすんだ緑色ではなかった、もっと鮮やかな緑色だったのにわたしが作ったものは…

「飲め」
「嫌です」
「自分が作ったものには責任を持て」
「わたしのこと愛してるなら教授が飲んでください」
「屁理屈を言うな」
「ありえないくらい縮んだらどうするんですか!むしろ飲んでる途中に爆発とかしたらどうするんですか、お嫁にいけません!というか死にますわたし!」
「死ぬ可能性が無きにしも非ずな薬を作った君が悪いだろう」
「教授ひどい…」
「大きくなっても小さくなっても愛してやろう、だから早く飲め」

きゅん、と胸の奥がときめいた気がするけれど教授はわたしのあごを掴んで固定すると得体の知れない液体を流し込んできたから、わたしはその液体が残っている口でキスしてあげた。
これでおあいこ!と思ったら教授がわたしの試験終了祝い?か仕返し?かわからないけどキスをひとつふたつみっつくれた。目が合うといつもとは違う表情をした教授がいて、ふとした一瞬だけ、笑うなんて、本当にずるい。わたしばっかり、わたしばっかり教授のことがすきでますます惹かれていくなんて、ずるい。こうやってわたしは一生この人から離れられない、離れる気なんてないけれど心臓もぎゅっと縛られたままだ。わたしにだけやさしい教授が液体をただの野菜ジュースに変えてくれていたことをわたしが知るのは、もっと先のはなし。


(20130406:リボン結びの心臓)


参考図書はハリー・ポッター魔法の教室です。明るい感じの教授も大好きなんですが、わたしはラブラブというよりはラブラブになるまでの過程が好きなのでこういうはなしは書いてて出会いから今までを書きたくなります。そんな時間ないしぐぬぬぬってなりながら割愛しました。そういえばローブ買っちゃいました。
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