大学生になってふたり暮らし:やなぎんの寝起きの悪さに対処する桜かわいいだろうなあという妄想





7:00
わたしの毎日は赤い目覚まし時計から響くアラーム音から始まる。
この赤い目覚まし時計は柳くんのお母さんがくれたもので、明音はすぐ壊してしまうから何個あっても困らないと思う、と、頂いたものだ。

「柳くん、起きて。今日は1限でしょ」

隣で死んだように眠っている彼からはいつも通り返事がかえってこない。いつものことだけれど、更に2回呼んで、4回ゆすってからわたしは朝ごはんの準備をする。その前に顔を洗って、お風呂のボタンを押して、メガネからコンタクトにして、歯磨きをする。この工程はわたしの朝になくてはならない工程なのだけれど、それがわかるのは彼が起きてからだ。

「柳くん、朝だから起きて」

わたしがゆすると、んー、と柳くんが言葉を発した。柳くんのおでこに全力でデコピンしてから、わたしは朝食の準備に取り掛かる。
今日の朝ごはんはフレンチトーストと海藻サラダとミネストローネ。朝は時間がないし、柳くんは朝からあまり食べないから少しだけ用意している。冷凍室に作り置きしておいたミネストローネをなべに入れ、隣のコンロにはフライパン。効率よく朝ごはんを作ったら、わたしは毎日の恒例行事をしなくてはならない。

時計を見ると7:28になっていて、本当にそろそろ起こさないと遅刻してしまう。そしてわたしも遅刻してしまうから、いつも最終手段に出るのだ。わたしは寝ていた場所にもぞもぞと戻って、まだベッドで死んだように寝ている柳くんに向き合った。

「柳くん、起きないと遅刻しちゃうよ」
「……………うん」
「もれなくわたしも遅刻しちゃうから、もう起きよう?」
「………………うん」

うん、と言って起きたためしが一回もないことはわかっている。最初は甘やかしていたけれど、柳くんがダメ人間になってしまう前にわたしが何とかしようと決めた。
柳くんはわたしを抱き枕のように扱って、ぎゅってしてきた。目は当然あいていない。かわいいけど、かわいいけどね、わたしの努力を返してくれ。

「明音!起きなさい!」
「…………はい」

はい、と言って起きたためしが一回もないことはわかっている。最初はちょっとかわいいなあとか思ってしまって甘やかしていたけれど、柳くんがダメ人間になってしまう前にわたしが何とかしようと決めた。
わたしが柳くんのことを名前で呼ぶことなんて甘いときとこの時しかない、レアなんですよ、レアなのに何で起きないんだ毎日毎日。

7:34
最終手段を使う時間がやってきた。
わたしは柳くんの綺麗な顔のパーツの一つである鼻をつまんだ。本来、鼻呼吸である柳くんは呻くけど起きない。次、もう一つの呼吸器官である口を塞いだ。これはねぼすけな柳くんからのご要望でわたしの口を使う。朝から人を殺しかけなければいけないし、恥ずかしいことこの上ないけれど、2人の単位の為だから仕方ない。
まだ起きない、死んでしまったら嫌なので鼻から手をはずすと、口の中に舌が入ってきた。すかさず鼻に手を戻してつまもうとすると、目がパッチリあいた柳くんと目があった。口が、離れる。

「………さく、ら」
「おはよう、もう朝ごはんできてるよ。先にお風呂入ってきて」
「………うん」

うん、と言って入ったためしが一回もないことはわかっている。わたしは柳くんをベッドから引っ張り出すと、お風呂に投げ入れた。お風呂で目を覚ましてもらう。
その間にわたしは柳くんが昨日用意していた今日のお洋服をお風呂場の前に持って行って、わたしも着替えたり髪をとかしたりする。学校へ行く準備をしてから、テレビをつけて天気予報を見ながらカフェオレを作っていると、さっきまで死んだように寝ていたとは思えない爽やかな柳くんがいた。

「おはようございます…」
「おはよう、ごはん食べよっか」
「はい…毎日ありがとうございます」

用意した朝ごはんは冷めてしまったけれど、猫舌なわたしと柳くんにはこのくらいの温度がちょうどいい。

二人でまったりしていたら、遅刻ギリギリの時間になってしまってあわあわする、こんな日常どうでしょう。ごめんねより、ありがとうが溢れている、こんな日常どうでしょう。


かわいいくらし 

title:みみ  data:2012.12.29
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