明日はオーストラリアで天体ショーがあるらしい。

わたしも一度お姉ちゃんと一緒にみたことがあるけど、月があんなふうになるなんてこわかった。かるたではよく月のはなしがあるけど、昔の人も月があんなふうになるなんてこわかったのかなあ。ってかなちゃんに言ったら難しいことをたくさん説明してくれた。その後で「千早ちゃんはかるたばっかりなんだから」と笑われてしまった。わたしはかるたをやっていて笑われることなんてしょっちゅうだけど、かなちゃんの笑い方はその人たちとの笑い方とは違う。なんというか、やわらかくて好きだ。

かなちゃんの言うとおり、わたしの思考回路はかるたに直結している。あの時からかるたでいっぱいだ。

畳の上がわたしの居場所になった。わたしを見つけてくれたのは、太一でもお姉ちゃんでもない、新だったなあ。

高校選手権で新がわたしに声をかけてくれたあと、左手は痛むばかりだったのに心だけはずっと健康なままだった。


きらきらきらきら

いつもわたしにきらきらを与えてくれたのは新だった。

わたしの日常にきらきらしたものをそっとおいていってくれた。わたしという存在を気づかせてくれた。

わたしの中のどろどろもいらいらも全部、きらきらに変えてくれた。


今度はわたしがきらきらした星になる。
いつまでたっても遠いままだなんて悲しいから、わたしはもっと練習しなくちゃいけない。新と同じところを見つめていなきゃいけない。

今度はわたしが、あなたにきらきらをあげよう。


「新…!優勝おめでとう!」

「ありがとう」

「わたし、新のこと、応援してるからね!」

「うん、なんやいきなり」


わたしは言葉にして伝えることを新が苦手なの知ってる。

新は言わないけど、わたしはたくさん言葉をあげる。あげる。いらないって言われたらしょげる。

言う日は今日じゃなくてもいつでもいいけど、もう二人ともさよならしなくちゃいけない時間だし、次の大会までちょっとあるから会えないし。言わなくちゃ。


「わたし、新にずっとお礼言いたかったの。ありがとう」


「大切なものがたくさん出来たのは全部新のおかげ」


「わたし、一生新のこと好きだと思う」


たくさんの言葉を言い切って、新とのさよならをしようと思ったら、新はうつむいてしまっていて、わたしはさよなら出来ずにいた。新はゆっくりわたしと目線を合わせてから、鞄を下に置くと中をごそごそと何か探していた。
 
プレゼントやお菓子をくれるのかと思ったら、カシャカシャと鳴り響く札の音。
 

「千早」

「なーに?」

「千早の好きと俺の好きは違うかもしれん」

「えっ」

「俺の好きはこういう好きや」


新がわたしにくれたのは、かくとだにだった。
すみれちゃんの得意札でもあるその札はわたしにとっても特別な札になる。


ああ、またそうやってきらきらをわたしにくれる。


2012*11*13
きらきらはしあわせと似ている
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