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この閉鎖空間には空気がある。
独特の、甘い空気。
たくさん太陽のひかりを浴びたおふとんみたいな、いや、新しいチークをはじめて付けてうれしくなった時みたいな、いや、情事後のピロトークみたいな空気。
ぶち壊したのは黒い霊圧だった。
「いつか、なくなっちゃうのかな」
「…なにがだ」
「こんな日常も」
こんな日常が好きだ。
少し前までは非日常的だと思っていて、苦痛だと思いながら過ごしていたけれど、今となっては心地よいこの日常が好きだ。
だってあなたとわたし、2人だけの世界だから。
あなたを好きになった、不器用だけど4日に1回くらいやさしいあなたを、5日に1回くらい人間のような仕草をするあなたを、好きになった。わたしの周りにある空気がかわったのも、きっとそのせい。
真っ白いソファーでお互いの手が触れ絡み合っていてあったかい。
「結婚したいなあ。ウルキオラさんのこと、大好きだからお嫁さんになる、今決めた。わたしの未来はすてきでしょ」
「お前の未来に俺はいない」
「なんで?どうして?結婚したらずっと一緒にいられるのに」
「お前の未来を壊したくない」
繋いでいる手から、気持ちが流れてきた。だけど、あなた、全然わたしのことわかってないわ。
わたしはお花屋さんになりたかった。
でも、お花屋さんはかわいらしいお花を育てて売る、という代償にお花の茎部分にあるとげを取らなくてはいけなかったりして、手が荒れてしまう。催事のときはノルマがあったりして、厳しい業界らしい。フラワーアレンジのお仕事なら尚更お花を折ったりするからお花が本当に大好きな人でも心がおれてしまうのだという。
だから、別にいいの。
わたしの未来なんてその程度のものなんだから、あなたにあげるわ。
愛することをやめないで、わたしのことずっとずっと隣に置いて欲しいの、ねえ、いいでしょう?だから、あげるってば、全部あげるから、
「いやだ、どこにも行かないで」
逆説からキリトリセカイ様へ提出
photo by neco様
20100611