招待状がきた。
それは行っても行かなくてもいい自由参加だと書いてある、あるパーティの招待状。寧ろ行かない方がいいパーティの招待状。それでも参加しようと思ってしまうのは、わたしでも姫になれるのではないかという小さな期待からくるものなんだろう。
わたしが姫になることなんてないのに期待してしまうわたしは童話の読みすぎなのだ。
白を基調とされた部屋にいるわたしは白と正反対の色を纏っている。
わたしが凝視している彼は、ふわふわした白い物体を口へと運ぶ。その綺麗な指に思わず見とれてしまったのは、誰にも言えないわたしだけの秘密だ。だって言ったら絶対に馬鹿にされるから。
わたしは何か悔しくて、わたしにドキドキを与える彼に負けるのが悔しくて、彼が愛してやまない白いふわふわした物体を取り上げた。
「あ、なにす…」
「マシュマロ禁止!」
「えーなんでー」
「たまには栄養があるもの食べて下さい。」
「嫌だって言ったらどうする?」
白いソファーが軋んで、わたしの真横に彼の瞳があった。その瞳はわたしに挑戦するかのような鋭いものだったけれど、彼は本気で怒っていない。わたしにはわかる。
わたしが、嫌だと言ってもどうもしないと言ったら、彼は白い物体を食べ続けると思った。口からぽつりと出ていたのは前から心に秘めていた本音だった。
「マシュマロ大魔王…」
「何を言うかな、この口は。」
「マ、マシュマロの食べ過ぎで脳内がマシュマロになってたらどうすんの!」
「じゃあ、マシュマロとこれ交換しようよ」
彼の手のひらで光ったのは石。
彼はわたしにきらきら光っている宝石が埋め込まれた指輪を差し出した。
その指輪はもちろん結婚指輪や記念日にくれる指輪なんかじゃない。それでもわたしはその指輪をわざと左手の薬指に填めた。
光を反射しながら光る石はただの石のはずなのにきらきらと光っている。わたしの存在とは正反対。黒を纏ったわたしよりきらきらと光っていて目立つ石にわたしは嫌な気持ちになった。
「綺麗な指輪だね。」
「マーレリングだよ。」
「ありがとう。」
「…受け取ってくれるんだね、」
「当たり前でしょう?」
わたしが小さく微笑むと、彼は笑みを隠しながら下を向いた。
静寂の中でうるさいのは、カチカチと響く時計の秒針と、ドクドクと脈打つわたしの心臓だけ。
彼は顔を上げソファーから立った。見下すようにしてわたしに笑みを向けると、彼はわたしに跪いた。
「さあ、姫 お手をどうぞ」
この手をとったらどこへ行けるんだろう、なんて、わかりきっているのに一々そんなことを考えるわたしは面倒くさい女だ。
でもその手はきっと、彼がわたしを必要としてくれる世界、彼がわたしを違う意味で愛してくれる世界へと連れていってくれるんだろう。
はじまる狂気の舞踏会。
わたしはあなたの為に踊るだけ、
recycle:-)