わたしは自分が嫌いだ。
たとえば、人間じゃないところとか。

自分のどこがどんな風に嫌いなのか箇条書きにしてみたら、沢山ありすぎてマスターからもらった薄いピンク色のメモ帳を黒いサインペンでまっ黒にしてしまった。
わたしはそのまっ黒になってしまったメモ帳をマスターに見られたくなかった。捨てるともしかしたら見られてしまうかもしれない、マスターはそんなことしない人だけれど、このメモ帳の存在を知られたくなくて、今でもメモ帳をポケットの中へと忍ばせている。


「ミク、誕生日おめでとう」

「え?」

「あれ…今日だったよね」

「あ、ありがとう、マスター」


うわあ、恥ずかしい。

クリーム色をしたソファーにそれに合わせて置かれているクッション。わたしはそのクッションを顔の前にあてながら、赤くなっている顔を隠した。

マスターは笑顔で「顔見せて」とだけ言ってわたしの反応を待つ。
マスターに言われたからにはそれに従ってしまうのがボーカロイド、いや、わたし。

少しだけ目線を上にすると、マスターがにこにこしながらわたしを見ていた。


「ミクにプレゼントがあるんだ」

「くれるの?」

「うん。ミクの為に書いたんだよ。」


なんだろう、新しい歌かな。

わたしがワクワクしていると、マスターは一枚の薄い緑色をしたメモ帳をわたしの前に差し出した。


歌詞かなあ、そう思いながらメモ帳を開くと、黒いボールペンでびっしりと書かれたわたしへのメッセージ。

読みきれないくらいの沢山な字に、わたしはびっくりした。


わたしが暫くその場で固まってしまっていると、マスターはわたしの頭を軽く撫でた。


「マスター!」


ぎゅっとマスターに抱きついた。

わたしが持っていないものを持っているマスターは、いつもわたしに色々なものを与えてくれた。
わたしはマスターに買われてよかった。マスターはわたしを買って幸せですか?

普段なら考えないようなことを考えるわたしは、きっと誕生日マジックにでもかかってしまったんだろう。


「ミク、お誕生日おめでとう。これからもよろしく。」


ふわりと笑ったマスターとは反対に、わたしの視界は歪みはじめた。

わたしの目から、感情の粒が落ちた。



箇条書きのラブレター

・がんばり屋さんなところ
・実は料理が上手なところ
・双子に面倒みられてるところ
・歌が好きなところ

・ごめん書ききれない
・あ、全部だ
・人間じゃなくても大好きだよ

(こんなにいっぱいありがとう)


recycle:-)
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