今夜はきみと/Knight/together/night

きれいにつくろうと思わなくていい。胸に手をあててごらん。なにが聞こえる?なにを感じる?きみの目にはこの世界が いったいどれだけの色であふれている?見えているものをそのままくちから出してやればいい。音やかたちなんか あとからくっついてくるのさ。だいじょうぶおれをしんじて。


まっくらやみの海のなか。おなかもすかない、朝かよるかもわからない ただ波にまかせて漂うだけのわたしから、絶えず泡がこぼれている。このまま溶けてしまいそう。こくこくと揺れる首がおぼつかず、ひんやりとつめたい水が わたしも世界もおおっている。


ころんで擦りむいたあしには ハンカチをリボン結び いたくなくなるおまじないを きみにだけおしえてあげるよ


おんなじゆめ見て、やさしい朝日をむかえよう 寝ても覚めてもきみがそばにいてほしい


晴れて、夏のはじまりみたいな、ひだまりが灯るみたいな、あたたかい日。


駆け出して、ゆらめいて。きっとぼくら、ひとつになれやしないから。せめてこうして肩を並べて 手を繋いで、目を合わせる間くらいは、長く伸びた未来を信じていたい。透明なふたり、冷たい海で向きあって、やさしい終わりを夢見よう。

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「見えない臓器の名前は」
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