煙と吸い殻 | ナノ

ふぐ太様宅(まんぼう)の和史さんと拙宅のグザイのコラボ。



吸って、ゆっくりと吐き出す。ふわり、と煙が空気中に漂い溶けていく。俯いたことで垂れてきた金の髪を煙草とは逆の手で耳にかけてから、彼はもう一度手の中の煙草を口へと運んだ。
咥えて、吸って。
単調な動作の繰り返しを和史はただぼんやりと眺めていた。ふわり。風に流された煙草特有の匂いが鼻先を掠める。一枚の絵のようだ。そんなことを思いながらぼんやりと眺めていると、匂いに混じって低めの声が流れてきた。
「そんなに見られてもなにもねえぞ」
どうやら視線に気付いていたらしい。こちらを見ることもなくフェンスに肘をついて寄り掛かったままグザイはまたふわりと煙を吐き出した。
「綺麗だと思っただけですから。いいですよ、なにもしなくて」
そのままでいてください。そう返せば彼は可笑しそうに喉を鳴らした。くつり。空気の震える音が響く。暫くの間くつくつと喉を鳴らしたグザイはひとしきり笑って満足したのかひとつ息を吐いてそれを治めた。
変わってんなあ、お前も。そんなことないですよ。ンなことねえよ。グザイが言葉を吐き出す度にふわふわと煙が宙を舞うのを和史は目で追いかける。
「俺も煙草吸おうかなぁ」
「ガキにはまだ早えよ」
ぽつりと呟いた言葉に、グザイは口にそれをくわえたまま小さく笑う。馬鹿にするのでもなくただ感じたままを口にしたという響きを持ったそれにガキじゃないですよ、と言い返すのもなんだかあれな気がして、和史はただ酷いなあ、と眉を下げた。



10年。口にすれば大したことが無いような、けれどもやはり長い時間のなかで変わったこととはなんだろうか。
和史は自身の髪に視線をやり、それから苦く口許を歪ませる。目に映るそれの色は今でこそ茶だが、高校のとき…それこそ10年近く前は奇抜な色だった。若気のいたりってやつかな、なんて誰に対してかもわからない言い訳を心の中で呟きながら指に挟んだ煙草を口に運ぶ。ゆっくりと煙を吐き出して、そういえばこれも高校のときにはなかったものだと気付いた。吸い始めたのはいつだったか。覚えてなんていないけれど、自分が煙草を吸うきっかけになったのは間違いなくあの人のせいだ、と和史はそれを見つめた。
貴方のせいですよ、なんて言ったら彼はどんな顔をするだろうか。想像して、苦笑する。きっとあの人は可笑しそうに、楽しそうににやりと笑って、ヒトのせいにしてんじゃあねえよ、なんて言うんだろう。それでも、と和史は思う。
あの人があんなに綺麗に煙草を吸わなければ自分はきっと今、こうしていない。
「…グザイさんのせいだ」
ぽつりと吐き出した言葉は煙と共に空気中を漂い溶けていった。


あの人は今どうしているのだろう。昔と同じように綺麗に煙草を吸っているんだろうか。そうだったらいい。変わらずにいてくれればいい。
「…ガキだなあ」
頭に浮かんだ希望のようなそれにいつかの言葉を思い出す。最後に一度だけ煙を空へ放ち、和史はまだ長いそれを灰皿に押し付けた。



煙と吸い殻






>>ふーちゃんから当サイトが10000hitを迎えたという事でお祝いにふーちゃん宅の和史さんと拙宅のグザイのコラボ文を頂いて参りました!
うぉおおお何これ超萌える…!クシーの兄貴が煙草吸うシーンが細やかに書かれていてとても色っぽいです!兄貴エロいよ兄貴…!我が子に惚れそうになりました!
そして私の愛する和史さん\(^p^)/10年後の煙草吸う和史さんを想像して悶えましたが何か←
和史さんと兄貴が仲良さげな感じでほくほくです!

ふーちゃん有難うございました!
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