「ミルクティープリン?」
ちょうど今日からちょうど始まった、新作のプリンを買って帰りご飯を食べた後に小さなサプライズとして差し出せば目を見開いたろしょくんが私の言葉をそのまま返す。うん、と返事をしてから手を引いてリビングへ。ご飯を食べる時は向かい合わせ、おやつを食べる時は隣り合わせ。これは私たちの、なんとなくの暗黙の了解。
「試食たべたけどおいしかったよ」
「そうなん? ありがとうなあ」
「んーん!あーん」
ひとくち分を掬って差し出せば、素直に開く彼の口。ぱくりとスプーンを深くくわえ、するすると抜ける。数秒、目を細めたろしょくんが「うまいな」とこぼす。よかった。
「ろしょくんは好きじゃない感じかなって思ってた」
「カスタードプリンやないからな。別もんやと思えばうまいで」
「ふふ。やわらかいもんね」
「おん。…ん、なんかカラメル、普通のとちゃうんか?」
「え!すごい!正解!」
さすがだなあ、と思いながらぱちぱちと手を叩く。私が置いたスプーンをとったろしょくんがひとくち分掬って、今度は私の口にいれた。うん、おいしい。
「りんごのね、カラメルなの。茶葉はウバだよ!」
「ええやつ使っとんのやなぁ。りんご、林檎か。言われてみれば林檎やな」
「鼻に抜ける風味がりんご!おいしいね」
「……なつかしいなあ」
ぼたり。重たげに机に落ちていった言葉を丁寧に拾う。ろしょくんの右手に、自分の左手でゆるりと触れた。
「季節のプリンやってるお店でよかったって、すっごく思うよ」
「ほんま、それに尽きるわ」
「ふふ。次はマンゴーだよ!ココナッツ風味!」
「夏がくるもんな。えらい楽しみやね。それまでにミルクティーのやつ堪能しとかなあかんな」
「ご来店お待ちしておりま〜す」
ふは、とろしょくんが息を吐き出して笑うから、私も釣られて笑った。私たちが恋人になる前から、互いに楽しみにしていたプリンに感謝しつつも、残りをろしょくんの口にいれる。
「幸せやね」
「! …うん。とっても」
君と出会えてよかったと、心から思いながら。
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