さらさらのろしょくんの髪の毛からは、はちみつのにおいがする。このにおいを選んだのが私なのだと思えば、胸の奥の深いところにある、彼には決して言えないような独占欲が満たされていく。
「今日体熱いなぁ」
「あっつかったもんね、おひさま」
「お前の体温の話をしとんねん」
私の髪の毛をいくつか摘み、サラサラと落としていく動作を見つめる。眠たくなると体温が高くなるのを知っているろしょくんが、わざわざ口に出したことが不思議だ。
「いつもより熱いな。具合悪ないか?」
「うん。ねむたい」
「目ぇ閉じ」
「…んんん」
ろしょくんの背中に腕を回した。心臓の音を聞きながらそっと目を閉じれば、ゆるゆると撫でられ、旋毛に口付けが落とされる。ろしょくんはこれが好きらしい。私も好きなのでうれしい。
「おやすみ、な」
「うん。おやすみなさい」
素足と素足を重ねて、熱と寂しさを吸い取ってもらえるように彼にすり寄った。目を閉じていても彼が笑ったのはわかったので、私の吐息も自然と笑う。まだ寝たくないを言う前に先手を打たれた就寝の挨拶に、彼も随分私の扱いが上手くなったと、他人事のように思った。
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