「ろしょくん!ソフトクリームたべよ!」
「はいはい」
昨日のうちにろしょくんが買ってきてくれたソフトクリームを冷凍庫から取り出した。昨日は存在に気づく前に眠ってしまったので、朝からずっと楽しみだったのだ。
あ、めずらしい。ろしょくんバニラじゃなくてチョコ食べるんだ。
「ぽかぽかでアイス、おいしいねえ」
「贅沢やな」
「ね! ちっちゃな贅沢たくさんしたいね」
「沢山したら贅沢やなくなるやろ」
「たしかに!」
ぺろり、と舐めてすぐにふんわり甘いバニラの香り。最近のコンビニはすごい!
「うまいか?」
「うん!はい、バニラあーん」
「ん」
「おいし?」
「おん。ほら、チョコ」
「わーい」
おいしいおいしいと食べる私を見つめるろしょくんの視線はいつも優しい。痩せたいと言いながらこうして甘いものをやめられない私の、食べる姿を見るのが好きだと言う。
「ね、ろしょくん」
「あ?」
「買ってきてくれてありがと!」
「おー。どういたしまして」
気の抜けた返事に思わず笑みがこぼれる。大きくはないソファに身を寄せあって、ぐでんぐでんのスウェットを着て食べるアイスはなんとしあわせなことか。お風呂上がりでまだ少し濡れているろしょくんの長い髪が私の首元に張りついて、それがなんとなく心地よい。
「食い終わったら髪乾かさなあかんからな」
「はぁい」
「はやめに寝てまおか」
「うん。なんでー?」
「なんでてなんでもないんやけど」
あ、嘘ついた。ろしょくんは嘘をつくとき、いつも右手で耳をさわる癖がある。本人は気づいていないだろうけれど。
きっと、私が疲れていることを察しての言葉なのだろう。
「うん、ありがとう」
「…ばれたか」
「ばればれ!」
手がふさがっているからか、肩を軽くぶつけられる。わあーと間抜けな声を出す私に、今度はろしょくんが笑う。ああそうか。バニラじゃなくてチョコを選んだのは、ろしょくんからもらうひとくちの味が酷く幸福であることを知っているからだ。
top/次の日