ピ、とアラームの1音目で目を覚まして素早く止める。隣からぐがごご、と決して可愛いとは言えない音が聞こえてきてくるのを確認して安堵の息を吐く。いつもはおでこにキスをしてから布団を出るのだが、今日は日曜日。ろしょくんはおやすみの日だ。気持ちよく寝ているところを起こしてしまうのもな、と思いとどまって布団から抜け出す。できるだけ音を立てないように身支度を整えた。
「行ってくるね」
消え入りそうなくらい小さな声でそっと声をかけてからブーツを履く。朝は冷えるなぁ、寒いかなぁ、とドアを開けようとした瞬間。どたばたと大きな音が聞こえてきて、びっくりしてドアノブから手を離して振り返る。
「っ、びっ…くりした…すまん、俺寝とって…」
「わ。ろしょくん、おはよう。寝ててよかったのに」
背伸びをして彼の寝癖を整えてあげる。私の言葉が不満だったのか、ろしょくんは眉根を寄せていた。
「気遣てくれんのは嬉しいけどな…寂しいやんけ」
「…! さびしい」
「おん。…なんや、行ってらっしゃいのちゅーはいらないんか」
「いる!!」
拗ねた表情で呟かれた言葉に嬉しくなってしまって大きな声で返せば、ふは、と彼が息を吐いて笑う。それかちう、と触れるだけの可愛いキス。ろしょくんのあたたかいくちびるは、優しい温度をしている。
「ん、気をつけてな」
「うん。ありがとう!」
「あ、そうや。俺のマフラーしてき。寒いし虫除けにもなるやろ」
ぐるぐるぐる。普段はろしょくんが仕事にしていくマフラーを荒っぽく巻かれる。ふわふわだ。
「ろしょくんのにおいする〜」
「アホ、嗅ぐな」
「えへへ。じゃあ、行ってきまーす」
「おん、行ってらっしゃい」
寒いのに、寝巻きのまま靴を履いて玄関先まで見送ってくれるろしょくんに何度も振り返って手を振る。ポコン、と携帯から可愛い音が鳴り目をやれば、転ぶから前向いて歩いてな、とろしょくんからのメッセージ。にやける表情をマフラーで隠して、上機嫌で会社まで向かう。残業しないで帰るぞ、と意気込みながら。

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