「あら、ろしょくんおべんと忘れてる」

お休みだから届けてもいいんだけれど、時期が時期だしなぁとメッセージを送る。一向につかない既読にお仕事中だもんね、と納得させて洗濯を再開させた。最近暑くなってきたし、毛布をしまってタオルケットを出そうかなあと悩みながら洗濯物を干していく。新しいワイシャツ、今年はまだ買ってるの見てないな。今度買い物に行った時にそれとなく切り出してみようかな。身だしなみにきちんと気を遣う彼の無駄遣いとの線引きは未だに分からないほど難しいのだ。

「食べちゃお」

お昼になってもろしょくんからのお返事は来なかったので、夜は一緒に食べたいし、捨てちゃうのは嫌だし、ということでろしょくんのお弁当を食べちゃうことにした。彩りと栄養バランスを考え尽くされた箱の中は、自分から見てもよくできている。おいしい。出会ったばかりの頃、まだお付き合いもしていない頃にあの人に似合う女になりたいとありとあらゆる家事を猛勉強したのが懐かしい。…ろしょくん、購買でちゃんと買って食べてるかなぁ。

「っ、ただいま!」
「えっ」
「すまん俺弁当忘れてってしも、て…」

半分以上食べ進めてしまったお弁当と私を交互に見てろしょくんが固まる。わたしもそれを見て同じように固まった。先に動きだしたのは私で、大きな音を立てて立ち上がり一目散にキッチンまで走る。ヤバい、炊飯器の電源切っちゃったよ、オムライスでいいかな、いいよね。いい!うん!迷っている暇はない、と作り始める。数分した頃にようやくろしょくんがキッチンへ顔を覗かせた。

「っくく…そない焦らんでもええやん。ふっ、食うとるとは思わんかった…」
「笑いすぎ!!だって夜ごはんいっしょにたべたいじゃん!!ろしょくんおひるやすみ何時まで!?」
「すまんすまん。…ふふ、あと40分くらいやね」
「忘れたろしょくんが悪いんだからね!もー!卵といて!!」

もう一度すまん、と笑って言って私の頭をひとなでしてから冷蔵庫から卵を取りだしたろしょくんに思わず頬を膨らませた。

「慣れたもんやな」
「ふんっだ」
「機嫌直してぇや」
「ふーーーんっだ!!」

お椀にとかれた卵を受けとってフライパンに落とす。ろしょくんは以外と、とろふわよりしっかりめが好きだったりする。私はとろふわ派だ。

「お茶持ってってね、もうできるよ」
「ありがとうな」
「うん、どーいたしまして」

朝のお味噌汁の残りがあるのでそれも出してしまおう。和とか洋とか、お互い細かいことを気にしない質でよかった。

「いただきます」
「めしあがれ〜」
「ん、うまいなあ。えらい急いでたのにすごいもんやな」
「…褒めたってだめだもん」
「今日学校にヤクルト来る日やねん」
「!」
「いちご味買ったろかな〜思ったのになぁ?」
「ううう」
「いらへんみたいやなぁ。また来週やね」
「あー!それで許してあげるから!!」
「ん、ありがとさん」

今日も敵わない!!!

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