遠くからアラームの音が聞こえる。普段より少しだけ控えめな足音の後にそれが止まった。隣にあるはずの温かさがない。それに気づいて勢いよく飛び起きた。あれ、ソファの上だ。

「おはようさん。体痛ないか?」
「あ…ろしょくん、おはよう。いたくない」
「そら良かった。さっきまで俺もソファで一緒になって寝とったから安心しぃ。あー、隈できとるな」

ろしょくんの手のひらが私の頬に吸い付く。ろしょくんもだよ、と言葉にはならなかった。

「ろしょくんおやすみじゃないの?」
「月曜日やで? 仕事や」

中王区はその日にしかおやすみをくれないのか、ケチだな。

「…昨日は起きて待っとってくれてありがとうな」
「ううん。私がしたくてしたから。顔洗ってくるね、」
「ん。お前もお粥でええんか?」
「うん!」
「弁当は作っといたわ。菓子は昼に食いたいから持ってってもええか?」
「わ、ごめんね、ありがとう。じゃあラッピングしないとね!」

パタパタと朝の支度を開始し始める私と、いつも通りに新聞を読み始めるろしょくん。いつもと同じをふたりで演じて、少しでもズレないように歩み寄る。

「ろしょくん〜歯みがき粉ない〜〜」
「戸棚にあんで」
「おれんじ?」
「イチゴにした。…あ、お前薬飲んだんか? 飲んでへんな? はよし」
「んんん〜」
「返事!」
「ふぁい」
「口にもの入れたまま喋ったらあかん」
「んんむ」

じゃあどうすればいいんだ!と歯を磨きながら抗議の視線を送ればろしょくんが頬緩ませてこちらを見つめていた。意図がわからず、首を傾げ、歯磨きを終えてからろしょくんの元へぺたぺた歩く。

「ほんっま、手のかかるやっちゃな」

呆れた顔で私に薬と水の入ったコップを差し出し、飲み終えればそれを受け取ってくれる。飲み物を飲むのが下手な私の口元をタオルで乱雑に拭き、それからそのまま抱きつけば笑って受け止めてくれた。

ろしょくんのそれが、大好きだよって意味なことを知っているのは、世界でどこを探しても私だけだ。

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