今日は華の金曜日!等とは生まれてこの方一度も思ったことがない。連勤と残業でくたくたになった体を懸命に引き摺って百貨店へと足を運んだ。
毎年ギリギリまで決められない誕生日プレゼント。去年はマフラー。その前は万年筆。今年はどうしようかなあ、とぐるぐる店内を回る。ある程度の目星はつけているものの、なかなか購入に踏み込めていなかった。けれど明日はもう土曜日。ろしょくんはおやすみなので家にいるだろうし、私は週末なので忙しい。プレゼントを買うのは今日がラストチャンスなのは自明である。


うん、これだ。これにしよう。きっと喜んでくれるはず、と重たくなった右手を見てにやにやと口角が上がるのを抑えきれない。腕時計の時刻は既にろしょくんの定時をとっくにすぎていて、慌ててタクシーを捕まえて乗り込んだ。飲み会があると言っていたが、サプライズにしたいのでバレては困る。何時に帰ってくるか分からないから、はやく帰るに越したことはないだろう。ベッドの下に隠しきれるかなあ、とドキドキしながらタクシーの到着を待った。

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「ただいま〜」

返事はない。良かった、と安堵の息を吐いてから急いで寝室まで向かいプレゼントの数々を箱に詰めて押し込んだ。きっと喜んでくれる、だってろしょくんのことを考えて選んだんだから。と、言い聞かせる。なんだか胸がいっぱいになってしまい、自然とお腹も空いてこないので夕飯は食べないことにした。ぴろん、と可愛らしい通知音が鳴って携帯電話を見れば「すまん、遅くなる」のメッセージ。「大丈夫!楽しんでね。出るときにまた連絡ください」と返信してキッチンへ。予め買っておいたプリンの材料を取り出して腕まくり。これはきっと、明日になればバレてしまうだろう。それでもきっと、ろしょくんは下手くそな知らないふりをしてくれるんだろうな。

「おいしくなりますように」

何度も繰り返しつくったことのあるものだが、油断大敵だと気を引き締めてプリン作りに取り掛かる。隣にろしょくんがいなくても、ろしょくんの喜ぶ顔を想像するだけで嬉しくなるのだから、不思議だ。

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