気を失うように寝ていた。と、気づいたのは彼が帰ってきた音で目覚めたからだ。床に寝転んでいる私を見て目を丸く開き、おい、と焦った声が聞こえる。まずい、と急いで体を叩き起してなんでもないを装って彼におかえりと告げるも、彼からのただいまは返ってこなかった。

「ごめん、寝ちゃってた。いまご飯作るね」
「…作らんでええ。疲れとるなら無理すんな」
「眠たかっただけだから大丈夫だよ!」

視線を合わさないように振り返りキッチンまで行こうと足を持ち上げたところで右腕を強い力で引かれてバランスを崩して彼の胸元に倒れ込む。腕を引いた力とは打って変わって優しく抱きとめられて、先程まで外にいた彼の温度がひんやり心地よい。は、と息を吐く小さな音が自分の口から漏れて、盧笙くんはそれを見逃さない。

「なんで隠すん」

うまく飲み込めずにフローリングに落ちていった悲しそうな彼の声色。水を弾くように浮いたまま、なぞることすら許されないような気がした。

「好きなやつのこと、俺がわからんと思った? それともそんなに頼りないか?」
「ちがう!」
「…ん、すまん、いじわるな言い方したな」

くるり、と方向転換をされて彼と視線がぴったり合う。申し訳なさげに下げられた眉と、柔らかなまなざし。そっと頭に添えられる手。

「でも教えてくれないんはいやや。ちゃんと言うて?」
「…ぐあい、わるい、かも、」
「よくできました」

数度頭を撫でられて、それからひょい、と軽く彼に横抱きにされる。驚いて慌てて抱きつくように首元に手を回せば、くく、と笑う音。いつの間にか同じくらいになった体温に酷く安心した。

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