「ろしょくんがたりなーーーい!!!」
「うわびっくりさせんなや!ご飯中にでかい声だしたらあかん!座りなさい!」
「ううう…ろしょくん……ろしょくんが足りないの…」

夕飯も食べ終わりかけ、ひじきと里芋の煮物をもそもそと食べながら嘆く私にろしょくんは呆れ顔だ。私の仕事が忙しいのもあり、流行りのウイルスのせいでろしょくんの仕事が忙しくなってしまったのもあり、中々ふたりでの時間が多く取れないでいた。月に1回は必ずある土日どちらかのおやすみも、今月はない。もうしばらくデートに行っていないし、帰ってくる時間がばらばらなので外食に行くことすらままならない。翌日どちらかがはやく出勤しなければならない日々が続き、夜を更すことも朝に微睡むこともままならないのだ。

「ごちそうさましてからにしぃ。お行儀悪くしたらあかんよ」
「うう…ごめんなさい…」

わかればええねん、と優しい声色。少しだけ残っていたお味噌汁を飲み干して、食べるのが遅い私を待っていてくれたろしょくんと一緒にごちそうさまをする。ふたりで食器をキッチンへ持っていき、今日のお皿洗いは私の役目。ぴったりとくっついてお皿を洗い出した私を、ろしょくんは拒まなかった。

「寂しくさせてすまん」
「ろしょくんがあやまることじゃない…誰もわるくないもん…」
「そうやけど…」
「私こそわがまま言ってごめんね」

キュ、と水を止める音。お皿を拭き終わったろしょくんが神妙な顔つきでこちらを見つめていた。お風呂はご飯の前に済ませてしまったことだし「もう寝ちゃおっか」と精一杯の甘い提案。きっと、明日の準備があるだろうに、ろしょくんはそれに返事をせずに私の手を引いて寝室へ。

「絵本でも読んだろか」
「え〜〜〜読んで!」
「アホ、うちに絵本ないやろ」

眼鏡を外してサイドテーブルに置き、小さな子供にするように私の背中をぽんぽんと一定のリズムで叩いてくれる。ろしょくんの腕枕はかたいけど、あったかくて、この上なく安心する。すぐに眠気がやってきてしまって、寝てしまうことが勿体なくてかなしい。やだ、やだ、まだ起きていたいのに、と駄々をこねる。

「やだ…起きたらろしょくん、いないもん…」
「…おるよ。明日は特別早い日じゃあらへんし、早番や言うてたやん」
「そ、だけど……ん、ろしょく、」
「お前の傍におる。ずっとおるから、今日はもう寝てしまい。な?」

静かな部屋では私とろしょくんの心臓の音がはっきりと聞こえる。うん、と返事をできたかどうかも危ういが、ろしょくんが笑った気がしたので、きっと声になっていたのだろう。

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