「ろしょぉせんせ」
「あんなぁ、お前の先生ちゃうねん。この酔っぱらいめ」

むち、と片手で頬を挟まれる。んへへ、と自分の口から笑い声が漏れて、それを聞いて呆れたようにろしょくんが溜め息を吐く。にやけ顔、隠しきれていないからね、と言うのを我慢した。

「ろしょせんせ、こんばんは」
「…はいこんばんは」
「私には、すきな人がいます。その人のことがすきすぎて、毎日しあわせでいっぱいで、泣きそうになってしまいます。でも泣いたら困らせてしまうと思うので、我慢の日々です。どうしたらいいと思いますか?」

ふ、と彼の吐息が笑う。吊り上がっている目尻をゆるゆると下げて、それから咳払い。

「そやねぇ…。堪えきれん時は、泣いてもええんちゃうかな。そんだけ好きやと思ってくれとる人がいたら、思われてる相手もしあわせやと思うで。どんどん困らせたったらええやん。きっと全部、受止めたると思うねん」

好き、と言葉にするが早いが否か、彼の綺麗な頬に背伸びして口をつける。

ねえ、ろしょくん。これ以上ないってくらい、好きです。それを、返してもらえるなんて、本当にこれ以上ないくらいのしあわせです。あのね、ほんとはね。ラジオ聞いてて、ちょっと寂しくなったんだ。だってね、私はろしょくんの生徒にはなれないから。一生懸命考えた授業を、ろしょくんのステージで、教室で、聞くことができないから。でもね、言葉にするときっと困らせてしまうから。だからね、唇から伝わりますように。

「…あんな、好きなのはお前だけやないねん。俺も毎日しあわせなんよ。わかるか?」
「…わかんない」
「ん。じゃあこれから一生かけてでもわからせたる。…あんなぁ、お前が思っとるよりな、お前のこと好きなんよ。んー、まぁ、今はわからんくてもええわ」

私の涙をべろりと舌で掬いとって、悪戯な笑みを浮かべる彼に、どうしようもなく安心してしまった。ねえ、ろしょくん。泣き虫でごめんね。あのね、ろしょくんもね、わかってないよ。こんなに、こんなに、好きなこと。

「手ぇ繋いで帰ろか」
「! いいの?」
「しゃあなしやからな」

ああ、その笑みに、私がどれだけ救われているか、君はきっと知らないね。

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