吐いた息の白さが寒さを倍増させている気がする。手を擦り合わせて寒さを紛らわせてから改札を潜り抜けて最寄り駅を出れば数歩先に見慣れた広い背中を発見した。ぐん、と引き上がる体温とたちまちどこかに飛んでいってなくなった今日の疲労。脳が命令するよりも早く脚が動きだして、スピードを緩めることもせず彼の背中に飛びついた。

「なんやねんゴラァ!って、お前かいな」
「っ、ぷくく…っふふ、ろしょくん、がらわる〜い」
「うっさいわ!いきなり飛びついてくる方が悪いねん。…ふ、そんなに笑うなや。おかえり」
「まだ家じゃないもーん!」
そうは言いつつも、彼の隣に並んで顔を覗き込んで「ただいま」と言う。それを聞いて満足気な表情を浮かべたろしょくんがコートに突っ込んでいた手を差し出してきた。

「ん」
「いいの?」
「もうすぐそこやし」
「えへ、ありがとう!」

手を繋ぐのが好きな私と違ってろしょくんは外で手を繋ぐことをあまり許してはくれない。決して手を繋ぐのが嫌だとかではなく、単に生徒さんに見つかったら後々面倒くさいからだと言うが今やオオサカディビジョンを代表してバトルに出るようになってしまって、こうして外で指が絡まっているのは随分久しぶりのことだった。

「さむいねえ」
「そやねぇ。これからもっと寒なるで」
「えー」
「風邪引かんようにせんとな」
「手洗いうがい〜つまみぐい〜」
「いや、なんの歌やねん。つまみぐいはしたらあかん言うとるやろ」

口調とは裏腹にやわらかな突っ込みがうれしい。きゅ、きゅ、と指に力を入れればぎゅ、と握り返してくれる。あーあ、家がもっと遠かったらいいのにな。なーんて。

「あ、せやった」
「うん?」
「今日も一日おつかれさん」
「あ!忘れてた!ろしょくんもおつかれさま!」
「おおきに」

帰りが一緒になったのが嬉しくて、日課を忘れるところだった、とふたりで笑い合う。
明日も、その先も、ろしょくんと一緒にいられることがいちばん、しあわせだ。と、指先から彼にどうか伝わりますように。

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