「…はよ起きんと朝飯食う時間なくなるで」
「んん〜…?」
「手のかかるやっちゃな」

ばさり、と布団が引き剥がされ布団の中より冷たい空気が全身を襲う。脇の下に手を入れられ座らされて「わ」と声が出る。追いついていかない思考の中、視線の先にはもう既にいつものオールバックをきっちりセットしたろしょくんがいてぱちぱちと瞬きをした。あれ、今日は日曜日だから、いつもだから私が起きるまでろしょくんは寝ているのに。

「おはようさん。顔洗ってき。寝癖、酷いことなっとるよ」
「え、え」
「なんやもう忘れたん? 弁当つくる言うたやんけ」

ほら行った行った、と洗面所まで促され冷水で顔を洗ったところでようやく昨日の会話を思い出して納得がいく。あの言いぶりだとお弁当どころか朝ごはんまで作ってくれたらしい。なんて優しい人なんだ、とシャッキリした頭でリビングまで戻ればほかほかのごはんと焼き魚におみそしる。私の好きなしょっぱい味のたまごやき。

「ん、起きたか」
「うん!おはよぉ」
「おん。おはよう。…いただきます」
「おいしそ〜!いただきます!」

ぱくぱく、もぐもぐ。どれを食べても美味しくて、それを何度も声に出す。満更でもない表情をしたろしょくんがこちらをじっと見つめながら食べるものだから、私も同じことをし返してしまう。夕飯は早く帰ってきた方がつくるルールになっているが、ろしょくんがこうして朝ごはんをつくってくれたことはなかったかもしれない。あるとすれば、偶にお休みが被った日に昼まで寝てしまったときくらいだ。私の味付けより少しだけ濃い朝ごはんたちからは、幸せの味がする。


「ん、これ弁当。気をつけてな」
「うん、ありがとう!行ってくるね」
「行ってらっしゃい。帰ってくるの待っとるね」

ああはやく、お昼休みにならないかなあ!

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