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目が覚めると、普段とは違う景色に一瞬戸惑った。
少し体を起こし、腰に鈍い痛みを覚える。
そして、自分が何も纏っていないことに気づいた。
そうか、ここはリヴァイの部屋。
チェストに置かれている時計を確認すると、朝の4時を回ったところだった。



04 はじめての朝



昨晩の(まだ夜は明けていないが)情事のあと、いつの間にか眠ってしまったらしい。
組んず解れつしたあの時間を思い出すと恥ずかしくて顔が熱くなる。
けれど、とても幸せな一時だった。

腰が重たくて、ぽすんと枕に顔を埋める。
そのまま横を向くと、端正なリヴァイの顔があった。
いつも鋭い眼光を放つ眼は閉じられ、規則的な寝息が聞こえる。
その寝顔をまじまじと見つめた。
そういえば、眠っているリヴァイを見るのは初めてのことだ。
それでなくとも、いつもは恥ずかしくて、こんなに近くで彼の顔を直視することはできない。
滅多にないシチュエーションに少しドキドキする。

乱れた前髪が昨晩の激しさを彷彿とさせる。
彼の眼は暗い部屋でも鋭く光り、時に悩ましげに揺れてnameの胸を切なくさせた。
薄い唇が肌を這う度に甘い痺れが走った。
何度も紡がれた愛の囁きにどれだけ恍惚とさせられたことか。
女性に甘い言葉なんて言わなそうだし、情事の手つきはもっと乱暴そうな印象だって受けるのに。
実際の彼は真逆だった。
求めるような甘い言葉にnameは何度もくらくらしたし、触れてくる手つきは気遣いのある優しいものだった。
思い出すとまた身体が熱くなりそうだ。

結ばれた唇が目に入る。
それに引き寄せられるように、nameは顔を寄せた。
自然に息を止めて、薄い唇に自分の唇を重ねる。
数秒して顔を離すと、小さく呟いた。

「……リヴァイ」

その瞬間、閉じられていた瞼が上がり、灰色の眼がnameを映した。

「!!!?」

驚いて身を引いたnameだったが、リヴァイは逃げる彼女の肩に手を回すと、自分の方へと引き寄せた。
思ってもみなかった展開にnameは目を白黒させる。

「お前からしてくるなんて、随分積極的になったな」
「リ、リ、リヴァイさん…っ!!いつから起きてたんですか!?」
「お前が起きた時から」
「な!寝たふりしてたんですか?」
「別にふりなんかしてねえ。目を閉じて静かにしてただけだ」
「それを寝たふりと言うんですよー!」

さっきの行動を恥ずかしがるように、nameは顔を真っ赤にしていやいやと首を振った。
まさか起きてたなんて!
顔を隠したnameの手を退かすと、彼女の目には意地悪く笑ったリヴァイが映った。
ずるい。
何がずるいって、こんな時でもそんな風に笑う彼がかっこよく見えてしまうから。

「もう一度呼べよ」
「…え?」
「俺のことを、さっきみたいに」
「!…い、え、あれは」
「昨晩だって散々呼んでたじゃねえか」
「!!!」

昨晩の最中、激しく揺さぶられる中で、nameは何度も"リヴァイ"のことを呼び捨てで呼んだ。
自分にしがみつきながら何度も名前を呼ばれるのは、リヴァイにとってイイものだったらしい。
もっとも、無我夢中だったnameはほぼ無意識で呼んでいた。

「何恥ずかしがってる」

今度はシーツを引っ張って顔を隠す。
そうやって逃げれば逃げるほど、リヴァイは追っていきたくなる男だということを、nameはまだわかっていない。
nameが上に持ち上げるシーツを下へと引っ張ってやる。
するとnameは意地になってより上に引っ張ろうとするものだから、リヴァイはさらに意地悪をしたくなる。
力を加減するのを止めて、思い切りシーツを引き剥がす。
nameの白い肌が露になった。

「きゃ!?」

自分の体を隠すものがなくなり、nameは軽い悲鳴を上げる。
リヴァイが持っていったシーツを取り返そうと手を伸ばすと、逆に腕を掴まれてしまった。

「やだっ、恥ずかしいです!」
「お前が意地を張るからだ」
「〜っ!もう、リヴァイ!!」

むっとしたnameは思い切ってリヴァイを呼び捨てた。
リヴァイは口角を上げると、掴んでいた彼女の腕をベッドに押し付けて、nameを組み敷いた。
白い肌と、赤くなった頬が対照的だった。

「そうだ、いつもそうやって呼べよ」
「…努力します」

本当は、ずっと"さん"付けはやめたいと思っていた。
いざ呼び捨てにしようと思うと恥ずかしいけれど、これを機に慣れていきたい。

「…リヴァイ」

照れくさそうに笑ってもう一度呼んでみる。
まだぎこちないnameに笑いながら、リヴァイは彼女に顔を寄せる。

「なんだ?」

唇が重なる瞬間、nameは小さく囁いた。

「リヴァイ、好き」

その言葉は口付けに飲み込まれたが、確かにリヴァイの耳に届いた。
応えるように、優しく唇を啄む。
nameの腕がリヴァイの首に回される。
リヴァイは口付けを深くしながら、彼女のなだらかな腰を撫でた。
その手を上へと滑らせ、二つの膨らみに触れようとした。

その瞬間───。

「ファーラン〜、俺もう眠いよー」

下の階から声が聞こえた。
どうやらファーランとイザベルが帰ってきたらしい。
nameは彼の首に回していた腕をぱっと離すと、わたわたとし始めた。

「か、帰ってきた!」

nameは慌てて服を探した。
床に散らばっているかと思った服はチェストの上に丁寧に畳んであった。
律儀にリヴァイが畳んでおいてくれたようだ。
下着とワンピースを慌ただしく身につける彼女とは対照的に、リヴァイは寛ぎながらそれを眺めていた。
真面目な顔をしながら、nameはやはり着痩せするタイプなんだな、などと思っていた。
彼女の二つの膨らみは魅惑的だった。

「あのっ、服、ありがとうございました!」

nameは乱れた髪のまま急いでリヴァイの部屋を後にすると、すぐ隣の部屋に戻っていった。
しかし、彼女が自室に戻ったのは一瞬で、またすぐに部屋から出て一階へと降りていった。
「おかえりなさい」と2人を出迎える声が聞こえた。
わざわざ自室に戻って、今まさに起きたかのような演技をする彼女がおかしくて、リヴァイは喉を鳴らして笑った。

時計を見ると、もう5時を過ぎていた。
2人で迎えたはじめての朝は、慌ただしく始まった。



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