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イザベルは両手を掲げる。
鳥は無垢の翼を羽ばたかせると、爛々と眩しい太陽へ向かって飛んでいった。

名残惜しむように手を伸ばす。
目を細めているうちに、白い羽はあっという間に見えなくなってしまった。



01 進展



以前リヴァイに連れてきてもらった、空が見える洞窟。
イザベルが拾ってきた鳥を地上へ返すため、今日は4人で足を運んでいた。
傷を完治させた鳥は、自由の翼を取り戻したのだ。

去りゆく姿を喜びながらも、イザベルの笑顔は少し寂しげだった。


「このサンドイッチ、また作ってくれないか?」

晴天の下でのランチタイム中、ファーランは咀嚼しながらそう言った。

「いいよ?そんなに気に入った?」
「ああ、今度イザベルと夜通しの仕事があるからな。手軽に食べれる夜食を持っていきたいんだ」
「イザベルと?2人で?」

食事の手を止めてイザベルを見れば、彼女はサンドイッチを頬張りながらニッと笑った。

「そうだぜ。兄貴がいなくてもしっかり仕事してきてやる」

イザベルが加わる以前にも、ファーランとリヴァイが夜通しの仕事に行くことはたまにあった。
その時から夜食の話は出ていたが、満腹は眠気を誘うからと、結局無しになったのだ。

「イザベルは何かと騒がしいからな。今回は夜食を頼む」
「騒がしくなんかしてねえだろ!」
「お前は腹が減ると突然歌い出すだろうが!荷物の運搬は、静かに確認してねえとバレちまうんだよ」

彼らの夜通しの仕事とは、目的の品が無事に運搬されるかを見届けることだ。
倉庫の場所、個数、憲兵の存在などに注意しながら観察する。
問題が無ければ、くすねて闇市に売る。
大体は"まとも"な代物ではない。
闇市の商人たちにとっては非常に良い商品になるらしく、高値で買い取ってもらえることが多いのだ。


「わかった。夜食用のお弁当なら任せて!」

nameは拳を作って力強く返事をした。
その様子に、リヴァイとファーランは何とも言えぬ表情で苦笑する。
こんな仕事の内容を、彼女に話せるわけもなかった。

「サンキューな。nameはリヴァイと一晩、留守番しててくれ」
「うん、わかっ…」

ファーランの台詞にnameははっとする。
リヴァイと、留守番?


(それってつまり、一晩リヴァイさんと2人きりってこと?)


思わずリヴァイの方へと視線を向けるが、彼はいつもと変わらず無表情で、サンドイッチを食べている。

彼と2人きりで夜を過ごすというのは、これまでに一度もなかった。
恋仲になってからもずっとそうで、共同生活故、それは仕方ないことだった。

("一晩"…2人きり)

とても気恥しい響きに思えて、思わず顔が熱くなった。

夜食が必要なのは「3日後」とのこと。

サンドイッチにかぶりついたまま、3日後の夜のあれこれを想像してしまう。
2人きりなんて、どうしよう。
いやいや、いけない。
食事中に何を考えてるんだろう。

(でも…やっぱり、嬉しい)


忙しなく顔を赤くしたり青くしたりするnameを見て、ファーランは可笑しそうに笑った。
そして、自分が留守にしてる間に2人の関係が進展するであろうことを思うと、少し胸が痛んだ。
こんな好機をリヴァイが逃すはずはない。

(遂にリヴァイのものになっちまうのか)

ちらりと彼の顔を盗み見れば、相変わらずの無表情だ。
しかし、内心は3日後が楽しみで仕方ないに違いない。

そんな相棒を少し恨めしく思いながらも、ファーランは2人の進展を応援した。



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