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「なあ、リヴァイとどこまでヤったんだ?」

朝食を済ませリヴァイを見送ったあと、休暇のファーランとnameは食後のティータイムを楽しんでいた。
紅茶の香りと温かさで穏やかに流れていた時間は、彼のいかがわしい質問で終わりを告げた。



02 実のところ



「…は!?え、何言ってるの?ていうか何聞いちゃってるの!?」
「別にいいだろ?聞いて減るもんじゃねぇし」
「そういう問題じゃないから!」
「もう最後までシたのか?」
「シっ……ば、ばか!」

顔を真っ赤にしてnameは紅茶を一気に飲もうとしたが、まだ熱かったため驚いて口を離す。
ファーランが変なことを聞くもんだから味なんてわかりゃしないし、もうしっちゃかめっちゃかだ。
慌てふためくnameを見てファーランは思い切り吹き出した。

「あちち…もう、酷いよファーラン!」
「くくくっ…悪い悪い」
「ほんとだよ。なんてこと聞くんだか…」
「でもあるだろ?お前ら付き合ってるんだし」
「…………」
「なんでそこで黙るんだよ」

口元を抑えたまま黙り込んだnameをファーランは訝しげに見た。

「付き合ってる…のかな?」

自信なさげに呟くとnameは目を伏せた。

「ああ?付き合ってねぇのにイチャついてるのかよ」
「い、イチャついたりなんて…」
「たまにリヴァイの部屋に行ってること、俺は知ってるぜ」
「─!!」
「まあ、付き合ってるなら普通だろ。俺がリヴァイと同じ状況なら毎晩呼び出すしな」
「そういうもんなの?」
「ああ、好きならシたくなって当然だろ」

ファーランの言葉を頭で反芻しながら、昨晩もリヴァイに呼び出され過ごした時間を思い返す。

部屋で2人きりのときのリヴァイはとびきり甘い目でnameを見つめては、抱きしめたりキスをしたりする。
熱い接吻の最中、リヴァイはもどかしそうにnameの肩や背中を忙しなく撫でつけるが、それ以上は何もしない。
彼の部屋に行った夜はいつもそこで終わりだ。
それが嫌というわけではないし、男性経験のないnameにとっては安心できるものではあるが、それでもどこかもどかしいような、名残惜しいような気持ちにさせられていた。

それに───。

「付き合うって話、したことないし…」

「好きだ」と言われたし、恋人同士のような時間を過ごしているが、実のところ本当に付き合っているのかどうか不安に思っていた。
ファーランの言うように、"好きならシたくなる"のだとしたら、リヴァイは何故自分にキス以上のことはしてこないのだろう?

「name、お前は色々悩んでるみたいだが、気にしすぎだと思うぞ。俺から見たら、リヴァイはお前にゾッコンだ」
「……そう、だと嬉しいけど」
「そうだろ。俺の知る限りじゃ、リヴァイが今までの女に優しくしてることなんてなかったしな」
「今までの…」

リヴァイと初めて口付けしたとき、とても上手だと思ったし、"慣れている"とも感じた。
それまで彼から女性の影を感じることはなかったので内心驚き、そして、少し胸が痛んだ。

(過去の恋愛なんてあって当然。そんなの、これまで気にしたこともなかったのに)

nameはこれまで付き合った異性の過去の恋愛を気にしたことはほとんどなかった。
過去は過去だと割り切って、楽しく付き合うことができたのだ。
なのに、今回はどうしてこんなにも気になってしまうのか。

ズーンと沈んだように黙り込んだnameを見て、ファーランは首をかしげた。
直前の話の流れを思い返すと、自身の失言に気づいたようで、ばつが悪そうに頬をかいた。

「あー…まあ、あれだな!過去のことなんて気にしても仕方ないだろ!それに、言葉に縛られすぎるのもよくない。リヴァイが口下手なのはnameもわかるだろ?明確な言葉がなくても行動で判断すれば不安に思うこともなくなるさ」

ファーランはしどろもどろになりながら、「だろ?」と、元気づけるようにnameの肩にポンと手を置いた。
すると、彼女の肩は僅かに震えていた。
しまった、まさか、泣いてしまったのか。
次に紡ぐ言葉を頭の中で必死に探しながらファーランはダラダラと汗をかく。

「なあ、name…泣くなよ。そんな…」
「…ふふ」
「え…name?」
「っ、あはは!」

ファーランが顔を覗き込むようにすると、nameは耐えられない様子で吹き出した。
けらけらと可笑しそうに笑う表情には、もう暗さはない。

「ごめんごめん、なんか慌てたみたいだったからおかしくって」
「お前なあ…」
「さっき変なこと聞いてきたお返し。これでおあいこね!」
「ったく、怖いねえ女ってのは」

悪態をついたファーランだったが、安堵したように笑うと頬杖をついた。

「でも、ファーランの言う通りだね。つい不安になったけど、言葉に縛られないようにする」
「ああ、そのうち、そんなことも悩んでたっけなって思うくらいになるさ」
「うん。なんか…」
「ん?」
「ファーランには何でも相談できちゃうね」

nameも頬杖をつくと、ふわりと笑った。
それを見たファーランははっとして、高鳴った心臓を無視するように彼女から目を逸らした。
口に運んだ紅茶はもうぬるくなっていて、さっきより苦く感じる気がした。

「おう、何でも相談しろ。仲間なんだからな」
「ファーランも、悩んでたら相談してね」
「おー、じゃあリヴァイとどこまでヤ」
「それは却下」

きっぱりと言い切ったnameにファーランは苦笑する。
実のところ、nameが質問に答えなかったことに彼は安心しているのかもしれなかった。
気になるのに聞きたくないような矛盾する気持ちは、nameがリヴァイの過去を気にする気持ちとよく似ていた。



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