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リヴァイはnameをテーブルまで連れていくと、座るよう促した。

「座れ。とにかく今は自分を落ち着けろ」

促されるままnameは椅子に腰掛けた。
向かいにはリヴァイが座り、その隣にファーランが腰を下ろした。
リヴァイは腕を組み、真っ直ぐに彼女を見据えた。

「質問には答えてやる。だからこっちの質問にも正直に答えろ」



04 嫌いなお伽話みたいな



ファーランは横目でリヴァイを見た。
先までの苛立ちは落ち着いたらしい。
今は寧ろ、事の真偽を見定めようと冷静になっているようだ。

「…わかりました」

nameは頷いたものの、すぐに黙り込んでしまった。
何から聞けばよいかわからないのだ。
確認したいことは沢山あるはずのに、今は頭が追いつかない。

彼女の心情を悟ったのか、リヴァイは先に自分から質問することにした。
手始めに出身、年齢、職業を聞いてみた。
どんな質問にもnameは静かに答えた。
彼女は19歳で学生だと言った。
トウキョウに住んでいるとのことだったが、その地名がどこを指すのかリヴァイもファーランもわからなかった。

何より不審だったのは、彼女があの酒場へ行った記憶がないということだった。

「この地下街には一度も来たことがありません。そもそもいつ眠ったのかすらも…」

nameは片手で頭を抱えて記憶を遡った。
苦しげに閉ざされた瞼が震えている。

あの家を飛び出して帰ろうとした。
そして───。

「そうだ。電車に乗っていつの間にか寝ちゃったんだ。それが最後…でも、どうして」
「どうやら記憶喪失ではないらしいな」

自問自答しているnameを見て、リヴァイは確信した。
この女は記憶喪失ではない。
恐らく狂っているわけでもない。
勿論、貴族の娘でもない。

彼女の言動から導き出した結論に、リヴァイは反吐が出そうだった。
あまりにリアリティに欠け、まるで馬鹿馬鹿しいおとぎ話そのもの。
だが、それ以外の納得できる答えがない。

「てめぇの言ってることは理解できないが、てめぇの状況は理解できた」

nameは顔をそろりと上げた。
弱々しく揺れる瞳をリヴァイは見つめ返す。
これから言うことがその瞳をより不安にさせるだろうと、容易に想像できた。

「恐らく、てめぇは他所の世界から来たんだろう。そう考えれば辻褄が合う」
「…え?」

時が止まったようにnameは固まった。
リヴァイの発言があまりにも予想外なものだったからだ。
彼が冗談を言ったと思ったのか、ファーランは盛大に笑い出した。

「おいおいリヴァイ、お前らしくもない。他所の世界ってなんだよそりゃあ。冗談にしちゃ下手すぎるだろ」
「こいつの持ち物、言動、身なりから推測するとそう考えるのが妥当だ」

リヴァイは真顔で言ってのけた。
彼が冗談を言ったわけではないとわかると、ファーランの顔から笑みが消えた。
本気で、この女が他所の世界から来たと思っているようだ。

「どうしちゃったんだよリヴァイ。そんなおとぎ話みたいなことあるわけ…」
「お前も見ただろファーラン。あの紙幣をどう説明する?他の物も地上にすらないものばかりだ」
「いやでも……まさか」

ファーランは有り得ないものを見るような目をnameに向けた。
現実味がないことを言っているのはリヴァイも重々承知している。
ファーランの反応も当然だろう。
しかし、これが一番腑に落ちる結論だった。
自分たちの常識に、name・fam_nameは当てはまらないのだから。

「てめぇはどう思う、name」

初めてリヴァイに名前を呼ばれたnameは、びくりと肩を揺らした。
眉間に寄せられた皺が苦悩を表していた。

「この状況を他に説明できるか?」
「…………いいえ。有り得ないことだけど…そう考えるしかなさそうです」
「……結論が出たところで、聞きたいことはあるか」

質問をするようリヴァイは再びnameを促した。
どれだけ現実離れした現実でも、掌握し向き合っていかなければならない。
今の彼女にとってそれが最も必要なことだとリヴァイは思った。
彼女がこの先どんな道を行くにしても、この世界のことを知らなければどうすることもできないのだから。

nameは意を決したように顔を上げた。

「教えてください。この世界のこと」



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