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Liebe in Vampiren





「ごめんなさい」

nameは目の前の彼に向って頭を下げた。
たった6文字だが、何を意味するか充分に伝わったことだろう。
彼が落胆しているのが顔を見ずとも感じ取れた。

「…理由を教えてもらえるか?」

彼は静かな声色で尋ねた。
そろりと顔を上げて、nameは彼を見つめ返す。

「さっきの謝罪には二つあるの」
「二つ?」
「一つは、想いに応えられないことに対して」

彼は黙ったままnameの言葉を聞いている。
nameは少し間を置いた。二つ目の理由を口にするのが憚られた。
しかし彼女は、再び口を開いた。

「もう一つは、あなたの想いに甘えようとしたこと。あなたと一緒になれば色んなことを忘れられるかもしれないって一瞬でも思ってしまったの。でも、それは間違いだった」

少し眉を下げてnameは笑った。
何周と考えをループさせても、たどり着く答えは同じだった。

「私好きな人がいるの。もうどうしようもないくらいに、好きなの」



18 とどめの告白



暗闇の会議室。
壁とリヴァイの間でnameは固く目を瞑っていた。
息継ぎさえも許されないようなキスが続く。
鋭利な歯先に舌が切られないかヒヤリとしたが、すぐにそんなことも考えられなくなった。

(何やってるんだろ…私)

中庭で話しているところを見られ、誤解されたことが恥ずかしくて、腹が立ってしまって。
誰よりも尊敬しているリヴァイを罵ってしまった。

リヴァイに吸血される度、恋愛対象として見られていないことを自覚させられた。
でも、それでよかったはずなのだ。
もしも両思いになれたとしても、彼のそばにはいられなくなる。
彼が他の女の血を吸うのは嫌だ。
この役を取られたくない。

なんて、子供じみた想いだろう。

力になれればいいと言っておきながら、いつの間にかこんなにも貪欲になっている。
そんな自分に幻滅して、新しい恋に手を出そうとしたが、結局それもできなかった。

だから、決めたのだ。
叶わぬ恋の痛みと仲良くやっていこうと。
彼を想う気持ちだけは汚さずに大切にしていこうと。

(なのに…)

nameの目尻から涙が落ちた。
彼から与えられる不可解な口づけが、心を乱す。
舌を絡めとられ、上顎をなぞられるたびに体が反応してしまって恥ずかしかった。

「ん…ふっ」

nameの唇の端から吐息が漏れる。
リヴァイは彼女の首から肩を撫でると、強く抱きしめた。
後頭部を片手で固定され逃れられない。
角度を変えながら何度も唇がぶつかる。
リヴァイのキスは荒々しくも官能的でnameの胸を甘く切なくさせた。
縋りつくようにリヴァイの背に抱きつく。
さっき中庭で彼に言った通りだった。
もう、どうしようもない。

唇が離れると二人の間を銀糸が繋いだ。
色っぽい顔をしたリヴァイと見つめ合う。
自分も同じ顔をしてるのだろうか。

「ひぁ…っ」

突如、首筋を舐められnameはあられもない声を上げてしまった。
古い傷をなぞるように彼の舌は這い回り、徐々に下がっていく。
いつの間にかシャツの前は開けられ肩が晒されていた。
リヴァイはいつもの箇所に歯を突き立てると、強く噛みついた。

「いっ…ひぅ…っ!!」

快感が痛みへと変わり、nameは苦痛に顔を歪めた。
とてつもなく痛いのに、これを与えられることに安堵感を覚える自分は、かなりおかしくなっているのだろう。

「どうして、ですか…?」

掠れる声でnameは問う。

「今日のキスも…この間のシャワールームも…」

まるで恋人にするような抱擁や口づけは、錯覚を起こさせ一瞬の幸福をもたらす。
好きでいる以上そのどれも嫌ではない。

「こんなことされたら……期待するじゃないですか…っ」

「愛しているわけではない」と、ひとこと言ってくれるだけでいい。
そうすれば、吹っ切れるような気がした。
だって、今こうして血を吸えているのも愛がないからでしょう?

「兵長……リヴァイ兵長…好きです」

nameは小さく呟いた。涙に溺れるような声で。

「好き…」

うわごとのように愛を囁く。

リヴァイは彼女の肩口に顔を埋めたまま動かなくなっている。
しかし次の瞬間、彼はぶるりと身を震わせたかと思うと、彼女の肩から唇を離した。

見上げたリヴァイの眼は深い灰色に戻っており、その表情は彼にしては不釣り合いに狼狽して見えた。


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