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Liebe in Vampiren





その日の朝、リヴァイはとても目覚めが悪かった。
今日は血を絶って3日目。
そのせいだろう。

しかし、それだけではないことを、彼は嫌でも自覚させられていた。



16 冷静の中でくすぶる



木々の間を兵士たちがすり抜け、ワイヤーを巻き取る音と吹き出すガスの音が続く。
次の壁外調査へ向けて、リヴァイ班は立体機動の訓練に励んでいた。

リヴァイは適度にガスを吹かしながら班員たちの動きを確認していた。
無意識に視界の端でnameの姿を追う。
巨人の模型が現れては急所を削ぐ彼女の手つきには、いまいちキレがない。
訓練に集中できていないのは明らかだった。

やがてnameは、普段なら気づけるはずの巨人の不意の出現に対応しきれず、アンカーを刺し違えてしまった。
アンカーがきちんと木に固定されなかったせいでワイヤーがたゆむ。
重力に従って落下していくname。
リヴァイはいち早く反応し、彼女の腕を掴み上げた。

「兵長…!」

驚いたnameの声が聞こえた。
リヴァイはそのまま地面へと滑空する。
華麗に着地すると、突き放すように彼女の腕を離した。

「あ、ありがとうございました」

自分の失態を自覚したのだろう。
nameは至極申し訳なさそうに頭を下げた。

「死にてぇのか、てめぇは」
「いえ…次からは気を付けます」
「今が壁外なら、その次ってやつも来なかったかもしれねぇな」
「っ…仰る通りです。すみませんでした…」
「身が入らねぇなら午後は非番にしてもかまわねぇが?」

nameは下げたままの頭を左右に振った。
もっと何か言ってやりたい気分だったが、リヴァイは苛立ちを自制してその場から飛び立った。

思考を止めるように風を切っても、頭の中は同じことばかり。
nameが訓練に集中できない理由は何か。
それを考えると無性に腹が立つ。

昨日見た中庭のアベックの女の方が彼女でなければいいと、心のどこかで願っていた。

「チッ…」

自分へ向けて舌打ちをする。
その後の訓練は何の問題も起こらなかったが、彼の気分は晴れないままだった。



班員たちが訓練道具の片づけを始めているなか、リヴァイの耳にペトラとエルドの話し声が聞こえてきた。
彼らの会話は、リヴァイの苛立ちにとどめを刺すこととなった。

「今日のnameはなんか調子が悪いみたいだったな、あんなミスをするなんて」
「そうね…いや、もしかしたら…昨日のあれのせいかも」
「昨日のあれ?」
「エルドも男ならわかるでしょ。nameってあれで結構モテるから、苦労してるのよ」

納得したようにエルドは頷いたようだった。

日が傾き、影も斜めに伸びる。
リヴァイは己の歪んだ影を見下ろしていた。
赤黒い血のように、冷ややかな眼で。

「兵長?どこへ?」
「片づけが済んだらお前らは解散して構わない」

リヴァイはアンカーを放つと、一人で木々へと身を忍ばせた。
体を動かしていないと自分を制御できそうにない。

(馬鹿が……妙な感情に振り回されやがって)

自問自答しなくともわかる。
これは、嫉妬だ。
nameと他の男の噂を聞いて勝手に腹立たしくなっているのだ。
彼女は部下に過ぎないというのに。
それ以上の感情は抱かないと決めたのは自分自身だというのに。
ここへきて、何故。

(冷静になれ。冷静に)

風を切り、茂みを避けながら必死に頭を冷やし続けた。
そして、彼の頭に一つのひらめきが生まれた。
これはいい機会なのではないかと。

nameが他の男とくっついたとして、それは何の問題もない。
寧ろそれをきっかけに、このくすぶる気持ちを完全に消せるかもしれない。
その方が万事上手くいく。

リヴァイは木々から抜け出すと、地面に着地した。
眼を瞑り、深く息を吐く。

結論は出た。


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