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Liebe in Vampiren





強い眼差しのnameに気圧され、ハンジは瞬きを繰り返した。
書類が乱雑に散らばる彼女の部屋でもnameは姿勢を正している。
それは、覚悟の表われだった。



12 協力者は沈黙を許す



「吸血鬼が人間に戻る方法?」
「はい、何か知りませんか?もしくはそれが書かれた本を持っていたりとか」

兵団の図書館では収穫はなかったこと。
中央の大図書館もまた望み薄であることをnameは伝えた。

「うーん…残念ながら知らないな。吸血鬼に関する本はもしかしたらまだ他にもあるかもしれないけど、人間に戻るっていう話は読んだ覚えがないよ」
「…そうですか」

nameは落胆を隠せなかった。
次はどこを当たるべきかとすぐに思考を巡らせ始める。
切羽詰まった様子の彼女にハンジは首をかしげた。

「随分焦っているみたいだけど、何か問題でもあった?」
「いえ…」

nameは返答に窮した。
この問題を説明するのはいくらなんでも憚られる。
吸血鬼になった上官を助けたいと、正直に言ってみようか。
…いくらなんでもナンセンスだ。
お伽話の架空の人物について必死に調べているというだけでも充分奇妙なのに、そんなことを言えば頭のおかしい奴だと思われるだけだろう。

「ねえname。私は自分のことを夢見る探究者だと思っている。例えば君がどんなありえない話をしても、それを頭ごなしに馬鹿にしたりしないよ」
「…!」

ハンジは穏やかな口調で言った。
だがその目は真剣で、何か確認的なものがあった。

nameは初めて民話を見せてもらった時のことを思い出した。
色々と考察を聞かせてくれたあと、彼女はこう言ったのだ。
吸血鬼とはどこで出会ったの、と。
あれは強ち、冗談ではなかったのかもしれない。

「あの…!」

言いかけて、nameは言葉を飲んだ。
表情には迷いがある。

「…言えないか。相手の吸血鬼くんに気を使っているのかな」
「…………」
「それも答えられないね。わかった、もう事情は聞かないよ」
「……すみません」

ハンジは気を悪くした素振りは見せなかった。
茶化すこともしない。

「吸血鬼が人間に戻る方法、だったね。私なりに調べてみるよ」
「え…?でも」
「君は何も言っていない。だから私が勝手に解釈して、勝手に調査をするだけさ。それなら問題ないだろう?」

含み笑いをしてハンジは片目を瞑る。
彼女の言っている意味を理解したnameは面食らった。
すべて知らないふりをして協力してくれるということだ。

「いいんですか…?」
「面白がってからかいすぎたかもしれないからね。ささやかな罪滅ぼしだよ」
「?」

ハンジの頭にはリヴァイの姿があった。
正直なところ、吸血鬼の話は本気と冗談が半々だった。
リヴァイをからかうようなことを言ってみたのも、純粋な好奇心ゆえだったのだが。

(まさか、本当にいたなんてね)

事態はもっと深刻なものだったらしい。
焦燥するnameを見て確信してしまった。

「何かわかったらすぐに知らせるよ」
「…ありがとうございます!」

nameは深く頭を下げた。
まだ何も掴めてはいないが、少しだけ前進したような気がした。


「nameはさ、あの民話の娘をどう思う?」

部屋を出る彼女にハンジは尋ねた。
振り返ったnameは不思議そうな顔をしている。

「どう思うとは…?」
「旅人が吸血鬼だと知って、娘の恋心はなくなってしまったと思うかい?」
「…………」

nameは考えるように目線を逸らした。
しかし、すぐにまたハンジを見た。

「それはわかりません。けどもし私がその娘だったら、やることは今と同じです」

真っ直ぐな瞳に迷いはなかった。


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