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Liebe in Vampiren





兵団の図書館を利用したことは片手で数える程しかない。
nameは真っ直ぐに受付へと向かった。



10 周囲苦手分野だらけ



受付業務をしていたのは同期の子だった。
以前、リヴァイにお土産を渡すよう頼んできた彼女だ。
あれがきっかけでリヴァイとミットラスに行ったとは、口が裂けても言えない。

「nameが図書館にくるなんて珍しいね。事務処理で何が必要なものでもあるの?」
「ううん、私的なこと。どうしても調べたいことがあって」
「ますます珍しい!今日は雪かもね」

彼女の言葉は誇張されたものではない。
nameは訓練兵時代、座学が好きではなかった。
追試になるような点数をとることはなかったが、決して優秀だったとは言い難い。
立体機動の腕はいいのだから座学も真面目にやれば上位に食い込めるのに、と当時はよく言われたものだ。

本を探すことに慣れていないために、同じところを何度も行き来してしまう。
やっと目的の棚に辿り着いた頃にはnameはげんなりしていた。

(広すぎるし…多すぎる)

実際は、彼女が感じているほど調査兵団の図書館は広くない。
中央の図書館はここの倍以上だ。
nameは歴史の棚を見て回り、それらしい本を見つけては手に取って読んでみたが、収穫はイマイチだった。
当然だが、調査兵団の図書館には巨人や壁外調査に関する書物が大半だ。
nameは童話の本を何冊か腕に抱えると、受付へ持って行った。

「何あんた、こんな乙女な趣味あったっけ?」

貸出カードに日付を書きながら同期はおかしそうに笑った。
nameはやや気恥しそうに頬をかく。
愛想笑いを浮かべて本を受け取った。

「意外と面白いんだよ」
「ふーん?誰の影響かしら」

こういう時、女の勘は鋭い。
些細な変化によく気がつく。
それが意中の異性による影響であることは、年頃の彼女達ならよくあることだ。
例え兵士だとしても。
nameの脳裏にリヴァイの姿が浮かんだ。

「影響というか…力になりたい人がいるの」

同期の彼女は次の受付の対応に移っていた。
nameの小さな呟きは聞こえなかったらしい。
本を抱えて図書館をあとにした。
兵舎への通路を歩いていると、沈み始めた夕日がとても眩しかった。
リヴァイとミットラスの帰り道に見た夕暮れを思い出した。



「name」

通路の分かれ道で聞きなれた声に呼び止められた。
振り返らずとも誰だかわかる。

「リヴァイ兵長」

橙の夕日をバックに立つリヴァイがいた。
固定ベルトは付けたままだが、他の器具は外されている。
この様子だと今日の訓練はもう終了したらしい。

「午後休は有意義に過ごせたか」
「はい…いえ、実は慣れないことをしたものだから、普段より少し疲れたかもしれません」

nameは数冊の本を抱え直しながら苦笑した。

リヴァイは何気なく背表紙を見た。
どれも童話や物語の類ばかりだった。
彼女が何のためにそれを借りてきたのかが容易に理解でき、リヴァイは悩ましげに眉を曲げた。

「わざわざ声をかけたということは、今夜はあれですか?」

周りには誰もいないが、nameは念のため声を落として聞いた。
彼の部屋に呼ばれる周期はだいだい5日置き。
今日が丁度その日だった。
慣れた様子で聞いてきた彼女に、今度はリヴァイが苦笑した。
こんなことに慣れてはほしくないのだが。

「…ああ。悪いが頼む」
「了解です。寝静まった頃に伺います」

nameは微笑んで一礼すると、女子棟へと歩き出した。
その背を見ながらリヴァイは思う。
いつまでこんなことを繰り返すのだろうと。


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