50 ついにきた青学との練習試合の日。青学さんが来るのを万全の態勢で待ちかまえる我ら四天宝寺。万全の態勢いうても、正門で待ちかまえてるだけやけど。青学さんが来たところで金ちゃんがチャイム鳴ってまうとボケて、謙也先輩が走って来て突っ込んでボケて、財前くんはそれをタイム測ってボケて、白石部長は門の上にぶつかっとるし、小春先輩とユウジ先輩はいつもの感じやし。 っていうかこの掴みの正門、誰が考えたんやろか。しかも銀さんなんて誰にも突っ込んでもらえてへんし! 「コシマエおらんなんて聞いてへんかった」 「ごめんな、遠山くん」 「しゃあないで金ちゃん」 そう。コシマエくんはアメリカに行ってるらしい。やっぱりすごいんやな、コシマエくんって。金ちゃんは残念そうやったけど、でも練習は練習!コートに入れば金ちゃんもめっちゃ元気になっとった。 「手塚クン。ちょっとええか?」 「ああ。どうした」 「うちのマネージャー紹介しとくわ。2年の葛城千奈や」 「葛城です。短い間ですけど、わからへんことあったら何でも聞いてください」 「まさかまさか四天宝寺のマネージャー!?可愛い子がいてうらやましいにゃー」 「え、英二!こら!」 「いや、大石。英二の言う通りだ。こんな可愛いマネージャーがいるなんて聞いてなかったよ」 「一応、全国大会のときもおったんですけどね」 こない可愛い可愛い言ってもらえるなんて!青学さんええ人たちやーん!とりあえずお願いします、と言うてから、ドリンクボトルを持って、水道まで来た。大量のドリンク作りをしていると、ふと水道に財前くんが来た。 「ど、どないしたん?」 「何やようわからんことになってるから、抜けてきた」 「ようわからんこと?」 「謙也さんは増えるし、小春先輩たちは笑わせて全く試合にならへんし」 「謙也先輩が増える!?なんかようわからんけど、大変なことになってるんやな」 せっかく青学さんが来てくれてはるのに、結局うちらはいつもどおりやっとるし。青学さんの練習にならんやろなー。かわいそうに。っていうか財前くんは、戻らんくてええんやろか。 「財前くん、戻らんでええの?」 「巻き込まれたないし」 「ですよね」 そうやんな。財前くんはそういう人や。巻き込まれたくないことが始まるといっつもおらんくなるもんな。きっといつもこうやってサボってるんやろな。少しして、私が青学さんの分も含めた大量のドリンクの入ったカゴを持っていこうとすると、横からすっと財前くんに取られた。 「え?」 「持ってったるわ」 「ええ!?」 「何をそんなに驚いてんねん」 「だ、だって!どういう風の吹き回し!?財前くん熱でもある?」 「ないわ。お前ってほんま可愛くない奴やな」 「はいぃぃ!?別に可愛くなくて結構!青学さんは可愛いって言うてくれたもん」 「青学、目おかしいんちゃう?」 「財前くんの目がおかしいんや」 「アホ」 財前くんはそう言うて、ドリンクの入ったカゴで私をどついた。いってぇー。 ようこそ、四天宝寺へ (可愛い可愛い言われて) (何、浮かれとんねん) (ほんま、可愛い奴…) END |