46 千歳先輩と手塚さんの変則シングルス戦。 手も足も出ない財前くんにかける言葉すら見つからなかった。謙也先輩が言うとった財前くんのこと見とってやというのは、きっとこのことやろう。勝つためには仕方ないことやし、財前くんもそれはわかってる。わかってるからこそ、何もできなくて悔しいんやろな。 そして一方の試合は、なぜか千歳先輩の絶対予告が打ち破られた。 「うせやん。千歳先輩の才気煥発が…」 「なんでや。なんで千歳の予告が当たらんようになったんや」 謙也先輩がそう言うと、オサムちゃんはわからへんと言った。オサムちゃんにもわからへんなんて…。どうなってんねん!しかも手塚さんは次は1球でいいとか言い始めた。 「まさか、手塚の奴」 「え、どういうことなんですか?」 「才気煥発に目覚めたっちゅーことやろうな」 「そんな…」 そして手塚さんは、ホンマに1球で決めた。才気煥発って誰でも出来るもんちゃうんやろ?無我のなんちゃらの奥とかいうやつやろ?それをいとも簡単に見極めた手塚さんってすごすぎやろ! そこからの試合は早く過ぎ、6−1で決着はついた。手塚さんの勝利やった。うちら四天宝寺中は準決勝で惜しくも終わってしまった。試合を終えてベンチに戻ってきた財前くんと目が合った。何て声をかけたらええんやろ、とずっと考えてたけど、結局良い言葉なんて思いつかへんくて、 「お疲れ」 その言葉で精一杯やった。財前くんは、ふっと鼻で笑って、私の頭を叩いた。 「いったー!何で叩かれなアカンねん!」 「もっとええ言葉かけろや」 「なっ!しゃーないやん!何も思いつかへんかったんやから」 「ま、ない脳みそで考えてくれたことには感謝したるわ」 財前くんってホンマ素直やない。けど、これは財前くんなりの照れ隠しっちゅーことはわかってる。それが何だか可愛くて笑ってると、キモいと言われた。 全国大会が終わりました (あり?ワイは?) (金ちゃん…) END |