45 ついに始まったダブルス1。 千歳先輩と財前くん対手塚さんと乾さん。ダブルスやけど、手塚さんを止められるんは千歳先輩しかおらんくて、ダブルスやと才気煥発の力が発揮されへん。そこで財前くんに課せられたのは、サーブとレシーブ以外はコートの外に出ること、やった。変則的なシングルスでやることになった。 「ま、しゃーないっすね」 そう言ってコートの外に出た財前くん。相手の乾さんもコートの外に出て、手塚さんは2対1なんて卑怯なことはせずに、1対1で千歳先輩と真っ向勝負する。この試合で負けたら、うちらはもう終わりや。 「最初は、42球たい」 「42球ってそないにかかんのか」 「相手は手塚や。しゃあないわ」 相手がいくら手塚さんやからって42は多すぎやろ!初っ端から神隠しで攻める千歳先輩に神隠しで返す手塚さん。さらに手塚ゾーンつかったりと、最初から何か高レベルな試合展開がつづく。これが42球も続くんやろ!?そう思っとったとき、財前くんが動いた。 「財前の野郎、ポーチにでやがった!」 「この17球目で決まりや」 ポーチに出た財前くん。これで決まるかと思いきや財前くんの目の前でボールは消え、ボレーが決まることはなかった。がくんと膝を落とした財前くんに、乾さんはやめておいたほうがいいと声をかけた。 「あの財前くんが、何も打てへんなんて」 「それぐらい千歳と手塚の試合がすごいんやろ」 そして財前くんは手も足もだせないまま、千歳先輩の言ったとおり42球目で決まった。財前くんはただ、千歳先輩と手塚さんの試合を真っ直ぐ見つめているだけやった。 手も足も出ない試合 (何て声をかけたら) (いいんやろうか) END |