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関西大会を制した私達は全国大会出場への切符を手にした。そしてそんな全国大会を控えた今日、四天宝寺中の近くでは夏祭りが開催された。

私は、親友である真衣と一緒に行く約束をしてて、お母さんに浴衣を着つけてもらい、神社の鳥居で真衣を待った。7時に待ち合わせにしたんやけど、7時になっても真衣は来ず、行けれなくなった、というメールが私の携帯に届いた。


「マジかぁー」


どうやら急に腹痛になったらしい。確か去年も真衣と夏祭りに行こうとして、腹痛おこしてたような気がする。きっと真衣は夏祭りと相性悪いんやな。せっかく来たから、帰るのもなんか嫌や。かといって一人で回るんは寂しいなぁ。そう思ってたら、急に背後から飛びつかれた。


「千奈やーん!千奈もお祭り来てたん?」

「うげ、き、金ちゃん」


飛びついて来た正体は金ちゃんで、ニコニコしながら私に抱きついていた。く、くそう、可愛すぎるやろ!犯罪やで、その可愛さ!


「金ちゃーん!勝手に走ってくと危ないばい」

「千歳先輩」

「ん?千奈ばい。一人で祭に来たと?」

「まさか!友達が急に来れへんくなったんで、仕方なく帰ろうかと」

「ええー!もう帰るん?なら、ワイらと一緒に行こうや!なっ、千歳!」

「そうたい。んじゃ行くとね」

「まずはたこ焼きやー!」


ぐいっと金ちゃんに引っ張られ、たこ焼き屋まで連れて行かれた。でも、金ちゃんと千歳先輩と会えてよかったかも。祭行けるしな!よっしゃ、楽しんだモン勝ちやー!たこ焼きにいか焼き、焼きそば、ヨーヨー釣りに射的と金ちゃんに振り回されながらいろいろまわっていると、だんだん足が痛くなってきた。下駄って全然歩き慣れへん!


「き、金ちゃん。ちょっと休憩せえへん?」

「ええー!ワイまだフランクフルト食べてへん」

「ああ、そう」


ああ。ここに白石部長がおったら、絶対に休憩させてくれるのにな。なんて思っていたら、千歳先輩が財前ばい、と言った。千歳先輩が指さす方向を向くと、そこにはこっちをとてつもなく嫌そうな目で見ている財前くんがおった。


「あー!ざいぜんやー!財前もおったん!?」

「あー。うるさいのに会うた」

「財前、一人でまわっとると?」

「ちゃいます。謙也さんとおったんですけど、どっか走って行ってしまったんで探してたんすわ」

「そうなんや」

「なぁ、千歳ー!ワイ、フランクフルト食べたい」

「んー、せやねぇ。じゃあ金ちゃんと一緒に行ってくるばい。ばってん、財前が暇なら千奈と一緒にいんね」

「え、」

「ほな行ってくるわー!」


手をぶんぶんと大きく振る金ちゃんに、何かこそっと財前くんに言うてから笑顔で手を振る千歳先輩はすぐに消えて行った。


「まさかお前が金ちゃんと千歳先輩と一緒におるとはな」

「真衣が急に来れへんくなってもうて。そんでたまたま会うてん」

「ふーん」

「あー、疲れた」

「着慣れないモン着てるからや」

「だってお祭りでしか着れへんやん。可愛いやろ?」

「はっ」


は、鼻で笑いよった!可愛いの一言もでないんか、財前くんは!女心をわかってへんな。なのにモテるんやもんな。やっぱ顔がいいって得やな。


「ほなもう帰ろか」

「え」

「は?」

「え、もう帰るん?」

「足、痛いんやろ?」

「えっ」


そんなん一言も言うてへんのに。気付いてたんや。足も痛いけど、実は花火もみたかったりして。でもせっかく気遣ってくれてんのに、わがまま言ったらアカンよな。財前くんと二人で蝉の鳴き声のする夜道を歩く。足は痛いけど、何か財前くんにあったら、もっとお祭りに居たいと思ってしまう。なんでやろ。少し前を歩く財前くんの背中を眺めて、なぜか胸が苦しくなった。


「あ、ここでええよ。もう家、すぐそこやから」

「まだ歩ける気力ある?」

「へ?あ、うん、あるけど」

「ほなもうちょっと俺に付き合ってくれへん?」

「え?」


財前くんは、何も言わず私の手をとって歩きだした。な、何!何!何!?え、ええー!?ちょ、何か心臓やばいんですけど!自然と顔が熱くなるのがわかる。少し歩いたところで財前くんが足をとめたのは、小さな公園やった。


「公園?」

「穴場」

「穴場?」


私が聞き返したところで、どーんという音と共に花火があがった。この小さな公園からは、花火がよく見えて、財前くんがたまたま見つけたところらしい。わざわざ人混みで見なくても、こんなところで見えたんや!綺麗な花火があがっている間、私の手は未だに財前くんに繋がれたままで。花火のおかげで心臓のドキドキが聞こえへんくてよかったと思った。

花火が終わり、私と財前くんは特に何も話さないまま、歩き出した。財前くんは何も言わず、私を家まで送ってくれた。


「送ってくれて、ありがと」

「別に」

「じゃ、じゃあまた」

「葛城」

「え?」

「浴衣、似合っとるで。じゃあ」


顔が一気に熱くなる。

心臓がうるさいぐらいにドキドキする。

胸がぎゅーってなる。



この時初めて、これが恋だと知った。




夏祭り

(財前、貸しイチばい)

(財前、おま、今どこおんねん!)
(ああ。家っすわ。謙也さんまだおったんすか?)
(ずっとおったっちゅーねん!)



END


ツンデレ(笑)





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