36 「どんどんどどどーん、してんほーじー」 「なんやねん、そのやる気のない応援は!」 「いたっ!ちょっと白石部長、叩かんといてくださいよ!」 「府大会も立派な大会や!ちゃんと応援せえよ」 「すいませんでした」 地区予選を勝ち進み、今日は大阪府大会決勝戦。小春先輩と一氏先輩がダブルスで相手を翻弄し、大勝利をつかみ取っている間、私がてきとーに応援していると、白石部長に叩かれた。だって小春先輩と一氏先輩、完全に相手の人たちで遊んでるんやもん。あれ見たら相手に同情して応援する気もなくなるわー。 「次は財前の試合やで」 「え、財前くんシングルス3なんすか」 「オーダー聞いてへんかったんか?」 「水作ったりで忙しかったんで」 「ほら、ちゃんと応援せえよ」 ダブルス2、1と勝っているうちの学校は、次のシングルスで勝てば優勝が決まる。それが財前くんって!コートに立った財前くんは飄々としていた。 「君が四天宝寺の逸材、財前君やな」 「はぁ」 「悪いけど、所詮2年生や。オーダー間違うたな」 「ふは!挑発するなんて、相手もやるばい」 「千歳先輩、そない呑気な…。あんなこと言うってことは、確実に実力はあるってことちゃうんですか?」 「千奈、見てみんね。財前は顔色一つ変わってないたい。ばってん、相手はイライラしとるとよ」 「なるほど!相手がバカってことですね!」 「んん゛っ!千歳、千奈。静かにせえ」 「「すいません」」 あまりに私がでかい声で相手がバカなんて言うから、思わず白石部長が止めに来た。ほんますいません。私と千歳先輩がしゅんとしていると、財前くんが鼻で笑うのが見えた。 「ま、アイツが言うとおり、自分バカなんちゃいます?」 「何やと!?」 「財前!口には気ぃつけなさい」 「はいはい」 かくして始まった試合は、財前くんのストレート勝ちで、相手を完全に追い込みじわじわといたぶるその姿はまさにドSやと思った。 順調にすすんでおります (財前が勝ってまうからワイの試合ないやん!) (ま、しゃーないやろ) (ワイもやりたかったなー、今の兄ちゃんと) (お前がやったら間違いなくアイツ即死やわ) END |