34 「インきょーとー!!!」 「うるさいわ」 「何でやねん!テンションあげていこうや、財前くん!」 「たかが京都やん。いつでも来れるし」 「うわー、冷めてるー」 5月になって、最初の行事である春の笑顔満載遠足がやって来た。今年は京都を各班に別れてまわるということで、私と財前くんはたまたま同じ班になったため、一緒にまわらないといけない。 「まずはー、金閣寺!」 「そないはしゃぐもんか?」 「楽しいやん、遠足!去年とはちゃうねんで?」 「寺見て何が楽しいねん」 「うわ、その発言、師範の前でしてみてや」 「絶対嫌や。波動球で飛ばされて死ぬわ」 「あはっ!飛ばされる財前くん、見てみたい」 「アホか」 「いたっ!殴らんでもええやん」 銀閣寺行って、金閣寺行って、清水寺行って、帰りにお土産を物色する。うーん、レギュラーの皆には何がええんやろ。テニス部全体には八つ橋にするとしてー、悩むわー。 「なぁなぁ、財前くん!お土産何がええと思う?」 「何がいいもなにも何で土産なんて買うてかなアカンねん」 「だってしゃあないやん!部長に買うてきてなって言われてんねんもん」 「たかが京都に遠足やのに土産必要あらへんやろ」 「いいから一緒に選んでや」 「嫌や。頼まれたのお前やねんから、お前が選べ」 「けちー」 「は?」 「う、うそです」 白石部長には何か植物的なの買うてけばいっか。小春先輩と一氏先輩には、この色違いのストラップにしよう。あ。この星の形のやつ謙也先輩に合いそう。 「それ、謙也さんにあげるん?」 「えっ?あ、うん。なんか謙也先輩に合いそうやったから」 「お前さ、ホンマに何も気付かへんの?」 「何が?」 「謙也さんがお前のことどう思っとるとか考えたことないん?」 「ないけど。だって私と謙也先輩はただの先輩と後輩やし」 「そんでお前はほんまに謙也さんのこと何とも思ってへんのか?」 「謙也先輩はええ人やけど、そこには恋愛感情とかいうものはないし」 「お前、好きな人とかおれへんの?」 「おらんけど…。じゃあ財前くんには好きな人おるん?」 「……お前になんか絶対言わんわ」 「ええー!人に聞いといて自分は言わんってどうなん、それ!」 私はまだ気付かない。 自分の中にある気持ちに。 京都へ遠足に来ました! (謙也先輩、お土産です) (えっ、何!?めっちゃ嬉しいんやけど) (……謙也さん、顔赤いっすわ) (うるさい!) END |