33 新学期が始まって数週間が経った。たまたまお弁当を忘れた私は、親友の真衣と一緒に食堂に来ていた。 「どれにしよー。オムライスかカレーか迷う」 「どっちでもええやん。早よしてや。後ろ詰まってんねんから」 「ええー。だって迷うやーん。決めた!オムライスにしよーっと」 お弁当を持ってきている真衣は先に席とっとくわ、と言って消えて行った。私は食堂のおばちゃんに食券を渡して、出来上がるのをもらった。真衣を探していると、後ろから千奈ちゃん?と私を呼ぶ声が聞こえて、振り向くとそこには謙也先輩と、財前くんがおった。 「あれっ、謙也先輩たちも食堂ですか?」 「せやねん。弁当忘れてもうて」 「そうなんですか」 「今、席探してんねんけど、そんな空いてへんのな」 「あ。よければ一緒に座ります?今、友達が席取ってくれてるんで。空いてたらですけど」 「ええの!?ほなご一緒させてもらおかー」 キョロキョロと真衣を探していると、財前くんがあそこにいるのそうちゃう?と言って、指を差した。窓際に座って、ものすごい嫌そうな顔でこっちを見ているのは間違いなく我が親友や。 「おまたせ、真衣」 「うん、かなり待った。っちゅーか何で増えてんの」 「いやぁ、すまんな。千奈ちゃんの友達か」 「そうですけど」 「真衣。謙也先輩やで。覚えてへん?小学校一緒やった」 「あー、そうか!小学校一緒やってんな!」 「謙也?知らんけど」 「あれやん、近くの病院の忍足先生のとこの」 「あー!忍足先生のとこの謙也さん?あー、何や変わりましたね。真衣って言います」 「小学校のときはまだ黒髪やったからなー」 「すいません。全く忍足先輩に興味なかったんで知りませんでしたわ」 「お、おお、そうか」 「謙也さん、こんなことでダメージくらってたら持ちませんよ。上田ってイケメン嫌いやから、とことん酷いこと言ってきますから」 真衣のイケメン嫌いは今に始まったことやない。小学校のときも確か謙也先輩に関しては全く興味なしやった。とくにあのイトコさんに関しては拒否反応まで示してたぐらいや。 「謙也先輩カレーなんですね」 「せやねん」 「私、カレーと迷ってオムライスにしたんですよ」 「そうなん?ちょっと食べる?」 「え?」 「えっ、あっ、えっと」 「いいんですか!?」 「えっ、ええよ」 「ほないただきます」 謙也先輩がカレーでよかったー!私は謙也先輩のカレーを一口(もちろん自分のスプーンで)もらった。んー、やっぱカレーもおいしいなぁ。真衣と財前くんはなぜか鼻で笑って、自分のお弁当を食べ始めた。あれ?何や私、変なことしたかな?謙也先輩は固まってはるし。 「謙也先輩?どないしました?」 「えっ、あ、なんでもあらへん」 「謙也さん、ださいすわ」 「何やて!?」 「私から見ても忍足先輩ってわかりやすすぎ」 「真衣ちゃんまで!」 「謙也先輩ってそないわかりやすいんですか?」 「そ、そんなことない!」 「ま、いつかお前にもわかるんちゃう?」 「ええー」 食堂にて謙也先輩と財前くんとお昼ごはん (カレーにしてよかった、なんて) (千奈ちゃんはいつになったら) (気付いてくれるんやろ) END |