29 バレンタインが終われば、ホワイトデーというものが来るわけで。 「一氏先輩!お返し貰いに来ました」 「……お前なぁ!お返しっちゅーもんは、貰いに来るもんやないやろ!」 「だって一氏先輩が一番お返し忘れそうやったんで。あげたからにはもらわないと」 「お前ほんっまにええ根性しとるな」 「褒め言葉ですか?」 「ちゃうわ!」 3月14日。1限目の授業が終わって早々に私は一氏先輩にホワイトデーのお返しを貰いに来た。一氏先輩は文句を言いながらも、可愛いクッキーが入った袋をくれた。わーい!一氏先輩、なんだかんだ言うて用意してくれたなんて、やさすぃー。で、 「白石部長はどこですか?」 「白石ならさっき廊下出てったはずやけど」 「お返し配りに行ったんですか?」 「ちゃうちゃう。見てみ」 一氏先輩にそう言われ、廊下を覗いてみると、そこには白石部長と女子の長蛇の列。な、なんやねん、これ! 「誰からもらったかわからんくなったから、握手会やて」 「アイドル気どりですね」 「お前も白石からお返し欲しかったら並べよ」 「並んでまで白石部長と握手したいとか思いませんから」 休み時間も少なくなったところで、私は女子の長蛇の列をかきわけて自分の教室まで戻った。それにしても握手会で返すとか、白石部長の考えることって、一体…。教室に戻ると、財前くんが机に突っ伏して寝てる姿が目に入った。あの女の子たちにお返しせえへんでええんやろか。 「小春先輩!あ、師範もおる!」 「千奈ちゃんやないのー!どないしたん?」 「バレンタインのお返し貰いに来ました」 「ちゃんと用意してるで!はい」 小春先輩からは、可愛いタオルハンカチとチョコ。師範からはクッキーやった。あとは、謙也先輩と小石川副部長と財前くんや。私が教室に戻ろうとしていると、どこからか呼びとめられた。振り向くとそこには謙也先輩がおった。 「謙也先輩」 「あ、あのな、千奈ちゃん。俺、何あげたらええんかわからんかってんけど…。バレンタインありがとうな」 「いえ!こちらこそありがとうございます」 「気に入らんかったら捨ててええから」 「そんなことしませんよ!ホンマありがとうございます!」 教室に戻る途中に中身を確認すると、可愛いストラップやった。謙也先輩、きっとこれ買うのにめっちゃ迷ったんやろな。失礼やけど、こういうのに慣れてなさそうやし。自分の席に座ると、ちょうど携帯のメールが鳴った。確認してみると、差出人は財前くんで、本文は、机の中だけやった。 机の中!?手を突っ込んでみると、指の先に何かが触れた。そーっと取り出してみると、棒のついた飴が3つほど丁寧にリボンでまとめられていた。これは財前くんからのホワイトデーのお返し!?ホワイトデーとか行事とか興味なし、と思ってたから絶対くれへんやろうなと思ってたのに…。いつの間に机の中に入れたんやろ。 ありがとう、とメール送ると、突然財前くんが私のほうを向き、口パクでばーか、と言った。誰がバカやねん!と思ったけど、きっとこれは財前くんなりの照れ隠しなんやろうな。 可愛いお返し (白石部長、これは…) (毒草図鑑や) (いりません。分厚いし重いし。そんで小石川副部長のお返しはこれまたなんなんですか!) (パセリの育て方や) (いりません!) END |