20 体育祭も無事に終わり、その翌週の土日に行われる、うちの中学の文化祭、木下藤吉郎祭の準備に追われていた。 「謙也先輩!それこっち運んでください」 「了解」 「師範!ここに看板付けてもろてええですか?」 「うむ。この辺りでええんやな」 「そうです」 自分のクラスは休憩所にしたため、準備は楽に終わった。だから私と財前くんは、部活の準備に駆り出された。ほとんどの2、3年生は自分たちのクラスのが大変やから少しの時間しか準備に来れへん。 「私、暗幕とか取ってきますね」 「頼むわ」 暗幕と足りないペンキや段ボールなどを借りに行くため、私は資料室まで来た。ええーっと、赤と緑と黄色のペンキやったかな。先生から受け取るととんでもない量になってしもた。うえー、これ持っていくんか。がんばろ。ふらふらっとよろけながらも部活で借りた教室に向かっていると、急に右手がすっと軽くなった。 「こない重いもの一人で持って危ないやろ」 「ビックリしたー。白石部長」 「誰も手伝ってくれへんかったんか?」 「あ、ちゃいます。こない重くなると思ってなくて。一人で」 「それでも誰か連れて来な一人じゃ危ないやろ」 「すいません」 ペンキも段ボールも白井部長が持ってくれて、私は暗幕だけになった。なんだか申し訳ない。白石部長は自分のクラスの準備がようやく一段落したらしい。 「部長のクラスは何やるんですか?」 「うちのクラスは縁日や。射的とかヨーヨー釣りとか」 「へぇー。楽しそうやないですか!文化祭っぽい」 「財前とおいでや」 「ちょ、何で財前くんとなんですか」 「付き合うとるんちゃうの?」 「はい?何で皆、私と財前くんをくっつけたがるんやろ」 「そりゃお似合いやからやろ」 「はぁ」 ここに財前くんがおったら鼻で笑ってんで、絶対に。でも、私の友達の真衣はイケメン嫌いやから白石部長のクラスなんて一緒に行ってくれへんやろな…。なんでイケメン嫌いなんやろ。 「ほな謙也と来たらどや?」 「謙也先輩とですか。それならええですね」 「財前はアカンくて謙也はええんや」 「だって何か財前くんって何事にもドライやし、謙也先輩なら一緒にはしゃいでくれそう」 「さよか。謙也に言ってみ。たぶん喜んで一緒に来てくれると思うで」 「言うてみます」 何かこうやって学校の中を白石部長と歩くのは新鮮やなー、とふいに思った。あ、確か文化祭って後夜祭もあった気がする。花火やるとか噂できいたなー。 「白石部長は誰かと文化祭まわったりする予定あるんですか?」 「ん?一緒にまわりたい?」 「いや、そういうわけやないです」 「ハハッ!ハッキリ言うたな。ま、企業秘密ってことにしとこか」 「何ですか、それ」 もうすぐ文化祭です (確かに財前はドライやけど) (お前に関しては熱いと思うで) (なーんて言ってやらんけど) END |