15 ある秋の日、体育館で体育の授業中。 今日は男子も女子もバスケということで、今は体育館の床に座り順番待ち中。 「ほら、アンタの財前くんに皆、みとれてんで」 「いやいや、真衣サン。私の財前くんやないから!」 男女一緒ということは、もちろん財前くんも一緒ということで。今は、財前くんが試合中。普段やる気ないくせに運動神経はええから、ボールが回ってこれば、すんなり抜けてゴールを決める。そんな財前くんに、女子たちは皆釘付け。 「しゃべる女子なんてアンタぐらいしかおらんから、てっきり付き合うてんのかと思ってたけど、ちゃうの?」 「ちゃうよ!それは私がテニス部マネージャーなだけ!」 「ふーん。ま、ええけど」 財前くんはモテるから、可愛い子にたくさん告白されてるらしい(小春先輩談)。それに私みたいなのなんて財前くんは絶対に好きにならんやろ。 ピーッという試合終了の合図が聞こえ、私達の番がまわってきた。小学校のときに少しだけバスケやってたことがある言うたら、ジャンプボールさせられるっていうね。ほんまやめてほしいわー。 ぽーんとあげられたボールをジャンプして、触ろうとする。最近やってへんかったからか、思い切り指の先をボールにぶつけてしまった。いってー!! 「千奈!」 「え、」 「まかせた!」 「ええ!?」 しかも痛いっちゅーのに、ボールはパスされるし、もうこうなったら勝ったるー!と痛みも忘れてがむしゃらにやっていたら、なんとか私らのチームが勝った。 「千奈ちゃんのおかげや!ホンマうまいなぁ、バスケ」 「えへへへ」 やばい、超じんじんすんねんけど!早よ体育終わってくれへんかな。今、保健室行ったら皆に心配される!そんなんめんどくさいから、それだけは避けたいねん!体育館の隅に移動し、体育座りでじっとしていると、ふと目の前に人が現れた。顔をあげれば、そこには財前くん。 「何?」 財前くんは何も言わずに、私の指をむぎゅっと握った。いってぇー!それさっき怪我した指!痛さに顔をゆがめると、財前くんははぁ、と溜め息をついた。 「お前、アホやろ」 「ちょ、離して」 「腫れとるし。保健室、行くで」 「え、別に後で行くから」 「こういうのは早めの処置が大事やねん」 「でも」 「今、誰も見てへんから」 財前くんはそう言うと、誰かがシュートを決めたらしくそれに盛り上がっていて誰も見ていないすきに、私を体育館から連れ出した。 体育でケガしました (いつから私のことを) (見ていたんだろう…) END |