13 「いやー、まさか財前が新人戦優勝するとはなぁ」 「やっぱアイツ天才やな」 「そんな部長も副部長も呑気な…」 部活が終わったあと、私が部誌を書くために残っていると、白石部長と小石川副部長が財前くんについて語りだした。ちなみにもう部室には私と部長と副部長しか残ってへんくて、しかももう着替え終わってんのに、二人は椅子に座りだした。 「来年の大会、これならイケるんとちゃうか?」 「そやなぁ。財前も頑張ってくれてるしな」 「財前くんってそないに頑張ってはるんですか?部活ではいつもやる気なしやのに」 「お前はまだまだ財前のこと見てへんのやな」 「だって噂によれば財前くんって最初から結構強かったらしいやないすか」 「そやなぁ」 「でも、その頃に比べて財前はだいぶ成長しとる。あれは部活だけの努力やない」 一生懸命やってんやろうなぁ、なんて言うて笑う二人は財前くんの保護者みたいやった。部長も副部長も財前くんのことよう見てるんやな。 「千奈もマネージャー業、様になってきてるし、よう頑張ってんで」 「何ですか、部長!いきなり誉めても何もでませんよ!」 「何も狙ってへん。部誌書き終わったんか?」 「あ、はい!ちょうどいま」 「ほな帰るで。送ってくわ」 「え、でも部長も副部長も家の方向、逆ちゃいます?私、歩きやし」 「こない遅くなってしもたのに、一人で帰らすわけにいかへんやろ」 「いやー、そんな別に」 「ええねん、ええねん」 ほな帰ろやー、なんて席を立つ部長と副部長。 夜は少し寒くなってきた暗い道を、部長と副部長に挟まれて帰った。 部長と副部長と (そういえば副部長ってどこに住んではるんですか?) (山や) (白石、何適当に言うてんねん) END |