08 白石部長にまでまわることなく、終わりを迎えた夏。私達は会場を後にする。白石部長は何もしゃべらず、何を考えているのかもわからず、ただ歩いているだけやった。そこでたまたま前方から立海の人達が来た。あ、あの美形な人や。あの人はシングルス1やって小春先輩が教えてくれた。本来なら白石部長はあの人と戦うことになっていたんだ。 通りすがりに超美形な人が、白石、と呼んだ。 「残念だったね。君と対戦してみたかったよ」 「ああ。そやな」 「来年、君と対戦できることを楽しみに待っているよ。決勝の舞台でね」 そう言うと超美形な人は、にこっと笑って去って行った。ただその人の一言が、白石部長の心を動かしたのは言うまでもない。白石部長は、くるりと振り返って、来年は全国優勝やで、と言うた。そのときの部長は、輝いて見えた。 決勝戦は、立海のストレート勝ち。来年こそは、ここに立つぞ、と意気込んで私達は東京を後にした。 「財前くーん。寝るん?」 「眠いねん、寝るわ」 「えー。大阪まで私、暇やん」 「知らん」 「ひど」 帰りの新幹線は、財前くんと隣の席やった。後ろでは一氏先輩と小春先輩がわーわー騒いどって、さらに謙也先輩もぎゃーぎゃー言うてて、この車両だけやたら騒がしすぎるやろ。迷惑極まりない。 「財前くん、全国大会すごかったなぁ」 「……せやな」 「どうかした?」 「…すごいな、全国って」 「うん」 「俺さ、なんとなくでテニス部入ったやん」 「エクスタシーに惚れたんちゃうかったっけ?」 「……もうええわ」 「嘘、嘘!ごめん、ごめん!で?」 アカン。せっかく財前くんが私に対して話してくれてんのに、危うく終わらせてしまうとこやった。でもほんまにエクスタシーに惚れたからやと思ってたとは、今さら言えへんけど。 「準決勝で、先輩らの試合見て、シングルス1までまわることなく終わってしもた試合見て、思ってん」 「何を?」 「……この人らと一緒に勝ちたいって」 少し照れながら話してくれた財前くん。すると後ろから、ひーかーるーと、一氏先輩と小春先輩が後ろから財前くんにちょっかいだした。 「お前も可愛いこと言うやんけ」 「最悪や」 「んもー。光君ったら普段ツンケンしてるくせに、可愛いんやからー!」 「ほんま最悪」 そう言うた財前くんが、ほんとは構ってもらえて嬉しいのがなんとなく伝わってきた。私は、財前くんのさっきの、勝ちたい、という言葉を聞いて、このテニス部のために、財前くんのために、一生懸命サポートしたいと思った。 財前くんの気持ち (財前くんってツンデレ?) (は?) (なんでもない。すいませんでした) END |