05 あの飲み会の日から1週間は経った。相変わらず私は、いつも通り仕事をこなして、そしてミスをして上司に怒られて。どうして私って要領が悪いんだろう。今日は謙也くんがご飯に誘ってくれた。謙也くん、医者で忙しいはずなのに、誘ってくれるのは嬉しい。 「莉子ちゃん、このあと用事あるん?」 「うん。ちょっとね」 「こないだの合コンのときの子?どっちどっち?白石くんのほう?」 「あー、違うほう?」 「医者のほうか!ゲットしてくるんやで」 「何をよ」 ゲットも何も、私と謙也くんはそういう関係ではない。謙也くんは私と蔵ノ介のことを知っているから相談にのってくれてるだけだ。私は仕事終わりに、化粧を軽く直してから、外へ出た。謙也くんとは駅で待ち合わせしている。外はイルミネーションでキラキラしていて、もうすぐクリスマスということを思い知らされる。 「莉子!」 「謙也くん、おまたせ」 「待ってへんで。ほな行こか」 謙也くんと駅の近くのお好み焼き屋さんに入った。ここは確か中学のときも何回か食べに来たような気がする。相変わらず変わらない店内に、懐かしさを感じた。 「なぁ、莉子」 「んー?」 「まだ白石のこと好きなん?」 お好み焼きを頬張りながら、ふいに謙也くんが聞いて来た。 「好きだよ」 「いつまで想い続けるん?」 「忘れられないんだ。忘れようと思っても蔵ノ介といたときの安心感が離れないんだ」 「辛くないん?」 「謙也くんは優しいね」 もし謙也くんみたいな人と付き合えてたら、今は違う人生だったかもしれない。でも私が好きなのは蔵ノ介で、自分でもバカみたいって思うけど、あんなに好きだった人を急に好きじゃない、なんて思えないんだ。お好み焼き屋さんから外に出ると、寒かった。白い息を吐きながら謙也くんと駅に戻ると、突然謙也くんが、忘れ物した!と声をあげた。 「え?」 「わ、忘れ物してしもてん!戻ってええかな」 「うん」 謙也くんは本当に優しいと思う。 駅前のベンチで蔵ノ介と知らない女の子が座っていた。 知ってしまった事実 (謙也くんはこのことを) (ずっと知っていたんだろうな) END |