04


お昼時。仕事がひと段落したところで、謙也が飯行かへん?と誘ってきた。俺は謙也と同じ病院で薬剤師として働いとって、こうやって謙也と一緒に飯行くことは度々ある。食堂へ行くと、こっちや、と恥ずかしいくらいに手をぶんぶん振っている謙也がおった。


「昨日、莉子とご飯行ったで」

「さよか。喜んどったか?」

「めっちゃ喜んどったわ」


謙也に莉子の好きな食べ物を教えたのも、美味しいお店を教えたのも俺。莉子の喜ぶ顔が見たくて。実際には見られてへんのやけど。まさか人数合わせで行った飲み会で中学のときに付き合うてて、自然消滅してしもた莉子がおるなんて思わなかった。あの頃の忘れようとしてた気持ちがまた蘇って来てしもて、酔った莉子を家に泊めた。正直、同じ部屋で寝れるわけもなく、莉子が隣の部屋にいると思うだけで、ドキドキして寝られへんかった。

もう忘れようと思ってたのに。


「なぁ、白石。莉子のこと、まだ好きなんやろ?」

「好きちゃうって言い聞かせてんけどな。莉子にはさぞかし迷惑やったやろな」

「そんなことはないと思うで」

「俺と莉子はもう終わってんねん。とっくの昔に。もうあの頃とはちゃうんや」

「好きなら好きでええんちゃうの?自然消滅って別れたことになるんかな?」

「謙也。これからも莉子のこと頼むわ」

「白石?」

「俺は幸せにはしてやれへん」


食べ終わった食器を持ち、俺は席を立った。おい、白石!と呼ぶ謙也を無視して、病院の屋上に来た。本当は知っている。莉子が俺から離れて行った理由も、別れてからもまだ俺のことを好いていてくれてること。自然消滅という形にしてしもたのは莉子のせいやなく、俺のせい。

なぁ、莉子。まだこないひどい男のこと気にしてんのやったら、もう気にせんでええよ。好きなように生きてほしい。



君を解放してあげることが俺に出来ること

(空を見上げたら)
(滲んで見えた)



END





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